研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究では造血幹細胞の単一細胞リアルタイムATP濃度リアルタイム解析技術を確立することを目的として、安定して体外で血液細胞のATP濃度を測定する条件を確立し、蛍光輝度の変化から単一細胞のATP濃度を定量する方法論を用意する。さらに、細胞の体積を同時測定する手法を準備して、そのうえでATP量の測定も実施する。これらを通じて造血幹細胞のATP濃度・量と細胞動態・運命との関連を解き明かすための基盤となる技術を創出する。
細胞が生存しながら各種のイベント(運動・増殖等)を実行する際にはエネルギー通貨ATPが消費される。すなわち、細胞活動の維持にはATPの適切な産生・消費のバランスが保たれることが肝要である。近年、エネルギー代謝バランスが組織幹細胞の運命決定に重要であることが知られるようになり、「幹細胞代謝学」という新たな融合領域が勃興してきた。骨髄に住まう造血幹細胞を制御する微小環境(ニッチ)因子として、骨髄内の低い酸素分圧が重要で、エネルギー代謝調節を通じて幹細胞性を維持し造血恒常性を保つことが報告されてきた。しかし、既存研究手法には限界があり、その結果、「造血幹細胞のATP濃度の細胞間多様性や制御機構、それらの本質的な意義は何であるか」という根源的な問いは未だに放置されている。そこで本研究では、ATPバイオセンサー搭載造血幹細胞を用いた、単一造血幹細胞のATP濃度・量のリアルタイム測定技術を確立して、この問いに答えることを目的とする。初年度は、技術開発の基盤となる体外でATP濃度を維持する培養条件の探索・同定を実施した。その過程においては、通常の造血幹細胞の培養条件ではATP濃度が速やかに低下することを見出し、既存の造血幹細胞代謝研究の陥穽の存在が示唆された。また、この検討に基づいて、ATPバイオセンサー搭載造血幹細胞によるATP濃度・量の定量測定系を確立するべく多様な測定条件を試行して、ある程度妥当性のある解析結果が得られる測定手法の確立に成功した。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通りの実験検討を実施することができている。
今後いくつかの技術的な困難が想定される計画内容があるが、多面的に課題解決を図りながら計画を推進する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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