研究課題/領域番号 |
22K19553
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分55:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
金田 篤志 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10313024)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | がん / エピゲノム / 消化器癌 |
研究開始時の研究の概要 |
癌の重要な分子異常であるエピゲノム変異について、それを標的とする薬剤の開発が遅れており、わずかに認可されたエピゲノム抗癌剤はゲノム全体に作用する非特異的な阻害剤であり、その毒性や副作用が問題となっている。本研究では申請者がエピゲノム異常の重要な関与を証明してきた消化器癌について、重要なドライバーエピゲノム変異領域を同定し、特定のデリバリーを要さず細胞内、核内へ移行し塩基配列特異的にDNAに認識・結合する化合物を応用して、領域選択的にエピゲノムを制御する新たな癌治療戦略を開発する挑戦的な研究を遂行する。
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研究実績の概要 |
エピゲノムはゲノム情報を制御し細胞の性質を運命づけるゲノム修飾情報であるが、消化器癌発生にはエピゲノム異常が大きく関与している。それゆえエピゲノムを標的とした機能性分子の開発と新たな治療法の基盤創生が、特に薬剤抵抗性の難治癌症例に対して求められている。従来の機能性分子単剤では作用領域がゲノム全体に及ぶ弊害があるため、本研究では、DNA配列を認識する小分子ピロール-イミダゾールポリアミド(PIP)を機能性分子に融合させ、作用領域を局所化させる技術開発を行った。ヒストン脱メチル化酵素阻害剤やヒストンアセチル化酵素阻害剤の構造を改変・簡略化したプロトタイプ化合物を合成し、PIPと縮合してそれぞれ腫瘍細胞へ投与しWST-8アッセイによって増殖抑制作用を確認した。縮合したPIPが認識する配列を含む領域において有意にエピゲノム改変が起きることをChIP-seq法により検証した。並行して、癌で標的となるエピゲノム異常領域を同定する解析を進めた。胃癌を網羅的エピゲノム解析するとユニークなエピゲノム異常を呈するいくつかの分子サブタイプに層別化され、胃癌サブタイプの1つであるEBV陽性胃癌では、EBV感染によりゲノムワイドにDNA異常メチル化が誘導され極端な高メチル化を呈するだけでなく、EBVゲノムがヘテロクロマチンに結合することによりエンハンサー活性化マークH3K4me1, H3K27acを獲得し、癌原遺伝子が発現亢進して発癌に寄与する。咽頭癌でも検証すると、EBV関連上咽頭癌でもEBV蛋白であるLMP1の作用によりDNA異常メチル化が誘導され癌抑制遺伝子が抑制されること、EBV感染によりEBVゲノムがヘテロクロマチンに結合し胃癌と同様にH3K4me1, H3K27acを上昇させ癌原遺伝子を発現上昇させることを同定した。またEBVゲノムが結合する領域に、胃癌と同様の配列特性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒストン脱メチル化酵素阻害剤やヒストンアセチル化酵素阻害剤の構造を改変・簡略化したプロトタイプ化合物をPIPと縮合し、腫瘍細胞へ投与して増殖抑制作用や領域選択的なエピゲノム阻害効果を認めるなど化合物合成と検証を順調に進めている。実際の癌で標的となるエピゲノム異常領域の同定やエピゲノム異常誘導モデルを用いた検証においても、胃癌や咽頭癌など重要なエピゲノム変化領域を順調に同定し、EBV感染モデルを用いた解析においてもEBV関連胃癌だけでなくEBV関連上咽頭癌を用いて、共通するダイナミックなエピゲノム変化と、共通する有力な標的領域を順調に同定した。標的となり得る塩基配列を認識するPIPをエピゲノム阻害剤に縮合した化合物について今後検証する。
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今後の研究の推進方策 |
標的となり得る塩基配列を認識するPIPをエピゲノム阻害剤に縮合した化合物について、EBV関連腫瘍細胞や感染モデルを用いて検証実験を進めるとともにそのデータから化合物の改良を行いシーズ化合物を合成する。
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