研究課題/領域番号 |
22K19560
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分55:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新谷 康 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90572983)
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研究分担者 |
大瀬 尚子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10570559)
舟木 壮一郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50464251)
狩野 孝 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70528455)
福井 絵里子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90814591)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 特発性間質性肺炎 / オルガノイド培養技術 / 薬剤スクリーニング / 幹細胞 / オルガノイド / 難治性呼吸器疾患 / 個別化医療 / バイオバンク |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、外科切除検体で得られる肺組織を用いて、正常肺、疾患由来組織によるオルガノイド作成技術を開発した。オルガノイド培養技術によって、解剖学的・機能的に生体内の器官に近い特徴を有し、正常組織由来のオルガノイドや疾患組織由来のオルガノイドの構築が可能あり、難治性肺疾患の新規バイオマーカーの探索、病態理解や薬効・毒性・薬物動態などの創薬研究、さらには感染症研究に使用できる。本研究では、気道上皮肺オルガノイドを用いた難治性呼吸器疾患の病態解明、薬剤スクリーニング情報源としての評価を行い、オルガノイド・バイオバンク構築により患者ごとの治療法の開発をめざした個別化医療を促進することにつなげたい。
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研究実績の概要 |
呼吸器領域では慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺線維症(IPF)など非可逆性の慢性進行性の肺疾患が急増しており、さらに新型コロナウイルスCOVID-19の後遺呼吸器障害による難治性呼吸器疾患に対する治療法の開発は重要な課題となる。少量のヒト由来組織を用いて、正常肺、COPD肺などの疾患由来組織によるオルガノイド作成技術を開発し、気道上皮肺オルガノイドを用いた難治性呼吸器疾患の病態解明、薬剤スクリーニング情報源としての役割評価および個別化医療を促進するバイオバンク構築を目的として本研究を計画した。 まず、成人および小児正常肺、さらにはCOPDやIPF由来肺よりオルガノイドを作成する技術を確立し、さらに継代できる培養条件を探索した。当科で肺切除を行った症例から、余剰肺組織を得てⅡ型肺胞上皮を抽出し3次元培養を開始してオルガノイドを樹立した。うち継代し得るものを選択し、各種実験に使用できることを確認した。さらに、培養中のオルガノイドを凍結保存した上で、凍結融解した場合にも、形態変化なく解析に用いることができることを確認した。 培養したオルガノイドの形態は由来肺によらず、Cysticなオルガノイドと上皮が折り重なって増殖するFoldedなオルガノイドの形成を認めた。それらの割合は由来肺によって異なる可能性が示唆された。現在、CysticなオルガノイドとFoldedなオルガノイドを比較することで、形態に影響する分子機構を明らかにするため、形態別のオルガノイドを採取し、遺伝子・蛋白発現の違いを探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当科で肺切除を行った20症例を対象に、余剰肺組織の研究使用、組織培養、網羅的遺伝子解析実施についてインフォームドコンセントを得た上で、肺切除直後に無菌状態で1cm立方の肺組織を得た。得られた肺組織を尖刀にて細分化し、プロテアーゼ処理により細胞レベルに分離させ、EpCAMとHTII-280の抗体を用いてソーティング後Ⅱ型肺胞上皮を抽出し、マトリゲルで包埋しメディウムを加えて3次元培養しオルガノイドを樹立した。うち継代し得るものは12例分(小児正常肺2例、COPD2例、肺線維症1例を含む)であった。安定して継代できたオルガノイドをホルマリン固定し、HE染色、細胞接着分子(E-cadherin、ZO-1)による免疫染色を行ったところ形態評価が可能であることを確認した。 培養中のオルガノイドをクライオバイアルに移し凍結保存培地に浸透し液体窒素に保存したオルガノイドを凍結融解した場合にも、形態変化なく培養できるオルガノイドを確認できた。 成人正常肺由来オルガノイドと小児正常肺由来オルガノイド、正常肺由来オルガノイドと疾患肺オルガノイドは、形態上に有意な差は認めなかったが、それぞれ上皮が単層に増殖するCysticなオルガノイドと上皮が折り重なって増殖するFoldedなオルガノイドの形成を認め、それらの割合が由来肺によって異なる可能性が示唆された。 作成したオルガノイドの長期保存方法の確立に時間を要したため、遺伝子・蛋白発現解析等の実施が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
凍結保存したオルガノイド中から凍結融解後にもViabilityの高いオルガノイドを用いて、形態の観察、遺伝子・蛋白発現解析を行う。 成人正常肺由来オルガノイドと小児正常肺由来オルガノイド、正常肺由来オルガノイドと疾患肺オルガノイドを対比させ、肺の発生機序に重要な幹細胞群、疾患の病態に関連する細胞群を同定する。さらには、CysticなオルガノイドとFoldedなオルガノイドを比較することで、形態に影響する分子機構を明らかにする。 また、外的な刺激による変化を明らかにするために、正常肺由来オルガノイドに対しては様々な成長因子や肺線維芽細胞由来の培養上清による形態変化の観察および遺伝子・蛋白発現変化を解析する。さらに、疾患肺由来のオルガノイドに抗炎症薬、抗線維化薬を反応させ同様にオルガノイドで生じる変化を確認する。
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