研究課題
挑戦的研究(萌芽)
脳腫瘍の中には全ゲノムシークエンスを用いた遺伝子異常解析を行っても、未だ原因となる遺伝子異常が見つかっていない疾患がある。これらの疾患においてはなぜ腫瘍が生じるか不明であるため、新しい治療の開発が進まない。ヒトゲノムの約半分は解析が難しい繰り返し領域で構成されているため、遺伝子異常が見逃されている可能性がある。このような解析困難領域も含めて遺伝子異常を解析できる手法を確立し、発症原因が不明な悪性脳腫瘍に対して原因遺伝子異常の同定を行う。
本研究により、髄芽腫における新しい遺伝子異常が発見された。髄芽腫は4つのサブグループに分類されるが、これまでどのように腫瘍が発生するかわかっていなかったGroup 3およびGroup 4髄芽腫でcore-binding factor alpha (CBFA)複合体に異常が生じていることがわかった。また、これらの異常は菱脳唇という将来小脳の一部になる部位の発達段階の神経前駆細胞に生じることで、神経の分化が停止し髄芽腫になるということがあきらかとなった。また、がんのゲノム内の解析が難しい領域の一部を解析できる手法を開発した。
これまで発症原因が不明であったGroup 3とGroup 4髄芽腫において新しい遺伝子異常が発見され、なぜ腫瘍が発生するのかが明らかになったことから、今後新しい治療へと繋がる可能性がある。腫瘍化する起源となる細胞も同定されたため、腫瘍に特徴的な遺伝子をターゲットとする治療や予防的な治療への発展が期待できる。また、疾患モデルの構築にもつながるため、基礎研究の発展も促す研究成果である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 2件、 招待講演 17件)
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