研究課題/領域番号 |
22K19594
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分56:生体機能および感覚に関する外科学およびその関連分野
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
岩瀬 明 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20362246)
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研究分担者 |
中村 智子 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (40732681)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 子宮内膜症 / 微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
「子宮内膜症には腹膜病変、卵巣嚢胞、深部病変があるが、同一個体に併存する場合でも、病変により性質(増殖能、浸潤能、がん化等)が異なるのはなぜか」という問いに対し、子宮内膜症の病因病態には微小環境からの影響が関与しているとの仮説をたて、2種類の異なるモデルマウスを作製し、異なる部位の内膜症組織切片およびシングルセルを用い、網羅的遺伝子発現解析の手法により、異なる部位での遺伝子発現を時空的に比較する。これら実験により、発現分布が異なっていても全体での発現量に差がないため検出できない、発現量が異なっていてもその意義づけが困難、といった従来法の問題点を克服し、子宮内膜症の病態に迫る。
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研究実績の概要 |
子宮内膜症は子宮内膜類似組織が子宮外に認められ、子宮内膜類似の周期性変化(増殖-剥離・出血)の過程において局所炎症・線維化・瘢痕化をきたす疾患である。病変は腹膜病変、子宮内膜症性卵巣嚢胞、腹膜深部や腸管等に浸潤する深部内膜症の3つに分類されるが、発生部位により増殖能、浸潤能、がん化リスクなどが異なることが知られている。本研究では、発生部位により表現型が異なる背景として、子宮内膜症発生部位の微小環境が子宮内膜症細胞に異なる影響を与えているとの仮説に基づき、異なる部位に子宮内膜類似組織を発生させたモデルマウスを用い、網羅的遺伝子発現変化を時空的に観察するという試みである。 同種マウスの子宮をレシピエントマウス腹腔内へ散布することにより異所性子宮内膜組織を生じさせる従来モデル(腹膜病変モデル)とドナーマウスの細切子宮にコラゲナーゼ処理を加えたペレットを作製し、レシピエントマウスの卵巣嚢内に注入することにより卵巣組織に異所性子宮内膜組織を生じさせる新しいモデル(子宮内膜症性卵巣嚢胞モデル)を作製した。初年度の検討により、両モデルマウスで子宮内膜類似組織の生着を確認した。現在、両モデルでの病変の数、大きさ等に加え組織学的変化(線維化、炎症細胞浸潤等)を解析している。この解析が終了した段階で、これらマウスの異所性内膜病変を用いた網羅的解析を開始する予定である。 また、内膜症組織の線維化に関連する要因を探索し、候補因子としてメフリンに着目した。まずヒト正常子宮内膜と子宮内膜症での発現を解析し、脱落膜細胞への変化と関連があることを見出した。現在メフリン遺伝子の強制発現細胞を作製しその表現型解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の検討により、両モデルマウスで子宮内膜類似組織の生着を確認した。現在、両モデルでの病変の数、大きさ等に加え組織学的変化(線維化、炎症細胞浸潤等)を解析している。研究は進捗しているが、初年度に組織学的評価を完了し、網羅的遺伝子解析に供するための検体を選別する予定であったが、その予定まで到達しなかった。主には、新規モデル(子宮内膜症性卵巣嚢胞モデル)での子宮内膜症類似組織の生着不良に起因している。
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今後の研究の推進方策 |
ドナーマウスの細切子宮にコラゲナーゼ処理を加えたペレットを作製し、レシピエントマウスの卵巣嚢内に注入することにより卵巣組織に異所性子宮内膜組織を生じさせる新しいモデル(子宮内膜症性卵巣嚢胞モデル)について、生着率をあげるための改善を行っている。2年目前半にはこの過程を完了し、従来モデルとの比較のために十分な検体を得ることを目標とする。 これらマウスの異所性内膜病変から新鮮凍結切片を作製しVisiumで解析する。Visiumスライドでは約5000のスポットごとに特異的なバーコード配列が負荷された数百万のキャプチャーオリゴヌクレオチドが含まれている。組織切片中のmRNAは、バーコード付加オリゴヌクレオチドにより増幅され、スポットごとの遺伝子発現情報が網羅的に得られる仕組みとなっている。遺伝子発現データをHE染色顕微鏡画像に統合することにより、微小環境における網羅的遺伝子発現を可視化する。 さらにこれらの検体を用いシングルセルRNA-seqを行う。RNA-seqの結果により子宮内膜症微小環境を構成する細胞をクラスタリングして特徴を抽出し、組織学的変化との関連を解析する。子宮内膜症では局所炎症・線維化が慢性的に進行しており、これらに関連するphenotypeでのクラスタリングが期待できるほか、これまでに知られていないphenotypeや細胞表面マーカーについても検討する。 また上記研究が停滞した場合には、線維化と関連する因子として見出したメフリンについて、関連因子を含めた解析を行う予定としている。
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