研究課題/領域番号 |
22K19603
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分56:生体機能および感覚に関する外科学およびその関連分野
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
杉野 法広 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10263782)
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研究分担者 |
佐藤 俊 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (10534604)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 子宮筋腫 / シングルセル解析 / 微小環境 / MED12変異 |
研究開始時の研究の概要 |
子宮筋腫は腫瘍細胞の他に線維芽細胞、免疫細胞や膠原繊維等が微小環境を形成している。子宮筋腫の多様性は腫瘍細胞と微小環境の相互作用の多様性に由来する可能性がある。本研究では、シングルセルレベルでの解析を行い子宮筋腫の発育とその多様性のメカニズムを腫瘍細胞と微小環境の構成細胞との相互作用を通して解明する。 筋腫組織の異種移植マウスモデルを用い筋腫の発育に伴う微小環境細胞集団の変化を調べ、発育に関与する細胞集団を同定すると共に、インタラクト-ム解析で細胞間の相互作用を具体的なリガンド-受容体系として抽出する。 本研究は、新規の発育機序に基づいた分子標的治療戦略へ治療の考え方を大きく転換させる研究である。
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研究実績の概要 |
子宮筋腫は女性ホルモンにより発育するが、その反応性、腫瘍の大きさ、構成する細胞・組織には多様性(個人差)がある。また、ドライバー変異であるMED12変異の有無により2つの筋腫サブタイプ(MED12変異を有するMED12(+)筋腫と有しないMED12(-)筋腫)が存在する。子宮筋腫では主となる平滑筋細胞の他に線維芽細胞、免疫細胞や膠原線維等により微小環境が形成されている。この微小環境における細胞間の相互作用が子宮筋腫の多様性に寄与すると考えられるため、これまでのバルクレベルでの解析ではその多様性の本質に迫ることは難しい。そこで本研究では、シングルセルレベルでの解析により子宮筋腫の発育と多様性のメカニズムを微小環境を構成する細胞の細胞間相互作用を通して解明することを目的とした。そのため、まず「1.MED12(+)と(-)筋腫検体においてシングルセルRNA sequencingにより子宮筋腫の微小環境を構成する細胞集団を同定」し、さらに「2.異種移植 (Patient-derived xenograft:PDX) モデルを用いて筋腫の発育に伴う微小環境を構成する細胞集団の変化を調べ、発育に最も関与する細胞集団を同定」する。 本年度は,上記研究項目1.については,シングルセルRNA sequencingにおいて実験の鍵となる子宮筋腫組織の単一細胞への分散法の確立を試みた。研究項目2.については,子宮筋腫の発育を再現できる現在唯一の実験系である異種移植モデルを確立し、筋腫細胞を重度免疫不全マウスの腎被膜下に移植することで筋腫様の腫瘤が再現性高く形成されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.MED12(+)と(-)筋腫検体におけるシングルセルRNA sequencingによる子宮筋腫の微小環境を構成する細胞集団の同定については、本年度中にシングルセルRNA sequencingまで終える予定であったが、筋腫組織を単一細胞へ分散する条件の確立が想定以上に困難であり、RNA sequencingまで進めなかった。一般に臓器や組織検体におけるシングルセル解析は、新鮮組織をコラゲナーゼやリベラーゼ等の酵素で処理し単一細胞に分散して用いるが、子宮筋腫は非常に膠原線維に富む組織であるため、酵素処理による一般的な方法では単一細胞までの分散は不可能であった。実際、新鮮組織を用いた子宮筋腫のシングルセル解析の先行論文が昨秋に他の研究グループにより報告されたが、子宮筋腫における細胞構成の大部分を占める平滑筋細胞と線維芽細胞がほとんど検出されておらずin vivoを反映しない内容だった。そこで我々は,最近の技術革新により実用化された、ホルマリン固定した組織からのシングルセル解析 (Fixed RNA プロファイリング:FLEX法) における組織分散法を検討した。その結果、急速凍結した子宮筋腫組織を細切し固定した後、酵素処理と特殊な分散器を用いることで固定組織が均一に単一細胞に分散された。このFLEX法により、子宮筋腫組織の分散法が確立され組織分散における問題は本年度中に解消された。 2.異種移植モデルを用いた子宮筋腫の発育に伴い微小環境を構成する細胞集団の変化および発育に最も関与する細胞集団の同定については、令和5年度以降に研究を始める予定であったが、本年度中に異種移植モデルを確立し充分に再現性を確認したことで、すぐにも実験できる精度にまで実験系が樹立された。 シングルセルRNA sequencingまで進まなかったという状況を踏まえ、現在の進捗状況は「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1.MED12(+)と(-)筋腫検体におけるシングルセルRNA sequencingによる子宮筋腫の微小環境を構成する細胞集団の同定:昨年度にFLEX法における組織分散法を検討したことにより、子宮筋腫組織の分散法が確立されシングルセルRNA sequencingを行う下地が整っている。FLEX法の利点は、組織固定により線維化が進んだ頑強な組織の分散が容易になる他、細胞サイズの差異で生じる、検出される細胞種のバイアスが固定により大きい細胞種の体積が縮むことで緩和されることが示唆されており、実際に複数の臓器・組織検体の解析からFLEX法の方が従来の新鮮組織によるシングルセルRNA sequencingに比べより多くの細胞種を検出できることが明らかになっている。また、凍結保存した組織を使用できるため、従来法では不可能だった採取日が異なる子宮筋腫検体を同時にまとめて解析することが可能になる。令和5年度は、このFLEX法を用いて、まずMED12(+)と(-)筋腫およびその対象となる正常筋層について各1検体ずつをシングルセルRNA sequencingに供し、検出された細胞種の構成がin vivoを反映することを確認した後、多検体による解析(各5検体を予定)を行う。 2.異種移植モデルを用いた子宮筋腫の発育に伴い微小環境を構成する細胞集団の変化および発育に最も関与する細胞集団の同定:令和5年度は、異種移植に用いる初代培養3日目の筋腫細胞、発育初期の筋腫として異種移植4週目の筋腫組織および発育の進んだ筋腫として異種移植8週目の筋腫組織を採取し、FLEX法によるシングルセルRNA sequencingに供し、それらのデータを比較検討することで発育過程における細胞構成の全体的な変化・動態を把握し、新規あるいは発育過程に特異的な細胞集団の同定を試みる。
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