研究課題/領域番号 |
22K19613
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
井関 祥子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80251544)
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研究分担者 |
武智 正樹 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (10455355)
足立 礼孝 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10631533)
中浜 健一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60281515)
二宮 洋一郎 国立情報学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 特任研究員 (90237777)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 神経堤細胞 / 中胚葉 / 骨芽細胞 / 組織由来 / 神経堤 / 頭蓋骨 / heterogeneity |
研究開始時の研究の概要 |
マウスを用いてin vivoおよびin vitroでの神経堤由来および中胚葉由来細胞について、細胞内の多くの生物学的過程を制御するcAMPの細胞内濃度変化を指標とし、両者のheterogeneityを含めた違いについて理解する。 これらの結果に基づいて適切なタイムポイントで、神経堤細胞と中胚葉細胞のシングルセルRNA-seq解析を行う。それぞれの細胞を標識するトランスジェニックマウスを用いてソーティングした細胞で行う。 これにより、神経堤細胞のheterogeneityと骨芽細胞分化優位性との関連、およびこのheterogeneityの発生過程での構築などについて明らかにする。
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研究実績の概要 |
神経堤細胞由来の前頭骨骨芽細胞(FOB)は中胚葉由来の頭頂骨骨芽細胞(POB)に比べてin vitro 及びin vivoの両方において高い骨形成能力を有することが知られている。これまでに、頭蓋骨を形成する各組織からのより厳密な細胞分離法を検討し、RNAシークエンスを行っている。発現変動遺伝子の抽出から、特にFOBとPOBのそれぞれに特徴的な遺伝子を網羅的に抽出している。FOBとPOBは両方とも骨芽細胞に特徴的な遺伝子発現を示していたが、FOBの方が骨形成関連因子やPTH受容体の発現が高くFOBの骨形成能の高さを裏付ける結果であった。一方で、POBは軟骨形成関連遺伝子の発現が高く、in vitroにおける軟骨細胞分化誘導によって軟骨細胞への分化能を示している。これらの前年度のデータにRNAシークエンス解析を追加し、結果を加算することによって、さらにFOBにおいて神経堤細胞に特徴的な遺伝子がより高いレベルで発現していることがより鮮明にわかるようになった。この結果から、神経堤細胞特異的に発現する遺伝子群とFOBの骨形成能の関連性が強く示唆されたため、これらのFOB特徴的な遺伝子発現の上流の解析を行っている。さらに、骨形成能や軟骨細胞への分化能だけではなく、FOBとPOBの脂肪細胞や線維芽細胞への分化能も検討した。特にFOBは脂肪細胞への分化誘導においても不均一な反応を示しており、免疫染色の結果と合わせて、分離されたFOBにおける間葉系間質細胞の混在が示唆された。骨髄の構造の特徴や、骨髄間質細胞などの性質を調べることでFOBの不均一性を生み出している原因の解明にも取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初は、頭蓋冠骨における神経堤細胞と中胚葉由来の骨芽細胞の違いに関して、特に神経堤細胞における多様性に着目して解析を計画していた。これまでに解析しているPTHへの反応に加えて、FOBに含まれる間葉系間質細胞の存在の可能性を見出している。実際に、神経堤由来の細胞系譜がGFPの発現によって可視化される遺伝子改変マウスの新生仔の前頭骨骨髄腔において、GFP陽性細胞は、間葉系間質細胞や間葉系未分化前駆細胞のマーカーであるPDGFRαやFOXC1を発現する細胞に分化していることを確かめている。これらの結果は、FOBとPOBがそれぞれ由来している骨髄の構造または内部環境に何らかの差がある可能性を示唆しており、さらに発展的な研究内容を含むものである。 また、FOB特異的な遺伝子発現に加えて、その上流を解析することによって、FOBにおける神経堤細胞特異的な遺伝子発現の制御に関わる転写因子を複数見出すことができた。この成果は当初予定している計画を上回るものであり、研究計画が順調に進展していると考えられる。PTH以外の生理活性物質に対するFOBおよびPOBの反応の検討は、現在も進行している。これまでの結果から、新たな局面も誕生しており、研究のさらなる遂行のため研究期間を1年間延長している。最終年度において、これまでに見出している分子シグナルのin vivoまたはin vitroにおける機能解析が課題となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、RNAシーケンスをさらに解析して、細胞の状態を決定するような遺伝子の発現の違いなどを検討する。また、分化誘導などの刺激を与えた際の遺伝子発現変化などを検討していく予定である。
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