研究課題
挑戦的研究(萌芽)
癌による骨喪失は進行性であるため、骨病変形成にかかわる分子の同定と新規機序による腫瘍抑制と骨病変を抑制する治療法の開発が喫緊の課題である。申請者は新たな骨病変形成因子の同定とともに新たな腫瘍バイオマーカータンパクの探索を行い、新規骨形成抑制因子NEO1を同定した。そこで本研究では、NEO1の骨芽細胞分化抑制機序および腫瘍細胞からの産生機序を解明する。さらに、患者血清中のNEO1濃度を計測し、骨病変との関連を臨床病理学的に解析し、バイオマーカーとしての可能性を検討する。
本研究では、新規骨形成抑制因子Neogenin1(NEO1)の骨芽細胞分化抑制機序および腫瘍細胞からの産生機序を解明し、腫瘍による骨病変形成の病態解明および新規治療法への開発へとつなげる。さらに、患者血清中のNEO1濃度を計測し、骨病変との関連を臨床病理学的に解析し、バイオマーカーとしての可能性を検討する。今年度の研究実績は以下のとおりである。①MC3T3-E1を用いた骨芽細胞培養系にリコンビナントNEO1(rNEO1)を添加し、骨芽細胞分化をAlizarin Red染色・von Kossa染色や各種骨芽細胞分化マーカーの発現を検討し評価をしたところ、rNEO1は骨芽細胞分化を顕著に抑制した。②BMPとNEO1をpreincubationさせ、血清スタベーションしたMC3T3-E1に添加し、骨芽細胞分化促進シグナルであるBMPシグナルの解析を行ったところ、rNEO1はBMP2に誘導されるSmad1/5/8のリン酸化抑制した。このことから、rNEO1はBMP2と結合し、BMP2の囮受容体として作用することが示唆された。③徳島大学血液内科の協力のもと、患者検体から組織アレイを作製し、骨髄腫細胞でのNEO1の発現を検討したところ、すべての患者で高発現していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
今年度研究では、NEO1がBMP2の囮受容体として機能し、骨芽細胞分化をin vitroで抑制すること、さらに骨髄腫患者検体ではすべての患者でNEO1が高発現することを確認できたことから、コアとなる結果が得ることができた。NEO1ノックダウン細胞も作成のめどが立っており、次年度は研究が加速すると考えられる。以上より、当初の予定通り研究が進捗している。
今後は、骨髄腫由来のNEO1に機能について検討を行う。具体的には、各種骨髄腫細胞株にNEO1 shRNAを導入し、NEO1ノックダウン(-KD)骨髄腫細胞を樹立する。樹立した骨髄腫培養上清を前骨芽細胞株MC3T3-E1を用いた骨芽細胞培養系に添加し、野生型骨髄腫培養上清と比較し骨芽細胞分化抑制が解除されるか検討する。さらに、野生型およびNEO1-KD骨髄腫細胞培養上清を採取し、骨芽細胞に作用させ、その分化に及ぼす影響を解析する。さらに、膜貫通型NEO1の骨髄腫細胞における増殖や機能(接着分子の発現やVEGFなどの産生)を野生型とNEO1-KD骨髄腫細胞を比較し解析する。また、骨髄腫細胞における細胞外NEO1産生制御におけるTACE, TIMP-3の関与を検討する。具体的には、TACE阻害剤処理あるいはTACEおよびTIMP-3のshRNAを導入した骨髄腫細胞を培養し、上清中あるいは膜結合型NEO1 の発現量を野生型と比較し検討する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 2件)
Blood Advances
巻: 7 号: 6 ページ: 1019-1032
10.1182/bloodadvances.2022007155
Antioxidants
巻: 12 号: 1 ページ: 133-133
10.3390/antiox12010133
International Journal of Hematology
巻: - 号: 1 ページ: 88-98
10.1007/s12185-023-03601-2
Journal of Bone and Mineral Metabolism
巻: - 号: 3 ページ: 388-403
10.1007/s00774-023-01403-4
Clinical & Translational Immunology
巻: 11 号: 1
10.1002/cti2.1371
Calcif Tissue Int
巻: 111 号: 3 ページ: 331-344
10.1007/s00223-022-00997-7