研究課題/領域番号 |
22K19630
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
常松 貴明 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (70726752)
|
研究分担者 |
森岡 翔 岐阜大学, 高等研究院, 客員教授 (60870029)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | 口腔がん / DNA損傷 / 共食い / がんの共食い |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高悪性度のがんの病理組織標本において死んだがん細胞が周囲の他のがん細胞によって貪食される現象”がんの共食い”が高頻度に認められることに着目して、この現象が高悪性度のがんの病態にどのように影響を与えているのかを明らかにすることを目的として研究を行う。特に本研究では、申請者らが新たに見出したがん細胞に抗がん剤などのDNA損傷を誘導するような環境で貪食が活性化することに着目する。本研究は、治療の難しい高悪性度のがんに対する新たな治療戦略が確立できる可能性を有する挑戦的な研究課題である。
|
研究実績の概要 |
死細胞は主にマクロファージや樹状細胞などのプロフェッショナルな貪食細胞によって貪食され、除去されることが 一般に古くから知られている。一方、がんの病理組織検体では非プロフェッショナルな細胞であるはずのがん細胞による死んだがん細胞の貪食像“がんの共食い”が認められる。この共食いは口腔がん、乳がんの高悪性度の組織型で高頻度に出現することが報告されている 。従って、高悪性度腫瘍に対する新しい治療ターゲットとしてのポテンシャルを有しているものの、その分子メカニズムはほとんど明らかとなっていない。そこで本研究では、“がんの共食い”ががん病態にどのような影響を与えているのか、またその分子メカニズムを明らかにすることを目的として研究を遂行する。特に本研究では、がん細胞に抗がん剤投与などによりDNA損傷誘導された状況下で貪食が活性化するという、研究代表者らが新たに見出した知見に着目する 。本研究は、遺伝子異常とは異なる視点から治療の難しい高悪性度腫瘍に対する新たな治療戦略を確立できる可能性を有する挑戦的な研究課題である。 今年度は、当初の研究計画に基づいて、主に①“がんの共食い”に重要なDNA損傷シグナルの同定と③“がんの共食い”のトランスクリプトーム解析を実施した。①に関して、阻害剤やsiRNAを用いた解析結果から、ATM-Chk1経路の活性化が“がんの共食い”の促進に重要であることが明らかとなった。加えて、③の解析結果より、“がんの共食い”によって血管新生、腫瘍免疫制御、代謝の活性化などが誘導される可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前述のように、当初の研究計画に従って研究を進め、ATM-Chk1経路の活性化が“がんの共食い”の促進に重要であることを明らかにすることができた。“がんの共食い”に重要なDNA損傷シグナルを同定することができたため、研究計画の目標を達成できたと考えている。また“がんの共食い”のトランスクリプトーム解析に関しても、まずは少数のサンプルを用いたこれまでに研究代表者が取得済みのデータの解析を中心に行なったが、“がんの共食い”によってがん細胞が獲得する形質の一端が明らかとなってきており、順調に進んでいるのではないかと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、当初の研究計画に基づいて、②DNA損傷による“がんの共食い”に重要な貪食関連分子の同定を進める。また、本年度①で明らかにすることができたATM-Chk1経路によって、“がんの共食い”が促進される分子メカニズムを②の結果も踏まえながら、解析を進めたいと考えている。③の“がんの共食い”のトランスクリプトーム解析に関しては、本年度は既に取得済みの小規模の解析データを用いたが、次年度は実際にDNA損傷の有無も加え、新たにデータを取得し、DNA損傷の有無が“がんの共食い”のトランスクリプトームに与える影響の解析を進める。さらに具体的に“がんの共食い”によってがん細胞が獲得する形質に重要な分子群の機能解析をin vitroおよびin vivoで行い、検証を進める。
|