研究課題
挑戦的研究(萌芽)
神経堤由来細胞中に存在する組織幹細胞の増殖・分化能は個々の細胞で大きく異なるため、神経堤由来細胞中に存在するヘテロな組織幹細胞集団から増殖と機能発現の良い最適な移植細胞を選定する方法を確立するために、神経堤由来細胞のシングルセルゲノミクス解析を行い、組織幹細胞集団における遺伝子発現様式の解析を行う。
神経堤由来細胞は、胎生期初期に形成される神経堤から口腔組織をはじめとした生体内の各組織に遊走し、その一部は組織幹細胞として定着先の組織内に残り、多分化能を維持することが知られている。成体組織から得られるため、ES細胞のように受精卵を用いる際の生命倫理的な問題もなく、またiPS細胞における癌化のリスクも低いことから、口腔組織をはじめとした組織再生医療の新しい細胞リソースとして期待されている。これまで、神経堤細胞特異的に発現するミエリンプロテイン0(P0)遺伝子プロモーター制御下でGFP(Green Fluorescent Protein ; 緑色螢光タンパク質)を発現するP0-Cre/GFPマウスを用い、GFP陽性細胞を指標として神経堤由来細胞を採取し、口腔組織をはじめとした組織再生への応用を検討してきた。しかし、GFP陽性細胞を指標として採取した神経堤由来細胞の多くはすでに分化した細胞であるため、その中から数少ない組織幹細胞を同定し、高純度に採取することが肝要であると考えた。そこで採取した神経堤由来細胞の遺伝子発現様式を1細胞ごとに同定し、どの細胞集団(クラスター)が組織幹細胞であるか検討するために、次世代シークエンサーによるシングルセルRNAシークエンス解析(scRNA-seq)を行った。P0-Cre/GFPマウス下鼻甲介組織よりGFP陽性細胞をセルソーティングにより分離後、次世代シークエンサーによる遺伝子解析を行い、ミトコンドリア遺伝子数の高い(>10%以上)細胞を除いた約1,000個の細胞に関し、UMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)解析を含むscRNA-seq解析を行なったところ、遺伝子発現様式が類似しているクラスターが13個存在していた。この中で、どのクラスターに組織幹細胞が存在するか検討歩るために、トラジェクトリー解析(分化過程の軌道解析により、細胞集団の始まりとなる幹細胞クラスターを同定する方法)から、Sox2を特異的発現するクラスターに組織幹細胞としての性質を有する細胞集団が存在する可能性が示唆された。また、このクラスターに存在する細胞に特異的に発現する細胞表面タンパク質の候補も同定された。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件)
J Oral Biosci
巻: 65 号: 1 ページ: 111-118
10.1016/j.job.2023.01.001
In Vitro Cell Dev Biol Anim
巻: 59 号: 1 ページ: 10-18
10.1007/s11626-023-00747-5
Regenerative Therapy
巻: 21 ページ: 398-405
10.1016/j.reth.2022.09.003
Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition
巻: 71 号: 3 ページ: 191-197
10.3164/jcbn.21-129
In Vitro Cellular & Developmental Biology - Animal
巻: 58 号: 7 ページ: 521-528
10.1007/s11626-022-00680-z