研究課題/領域番号 |
22K19678
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
鈴木 武博 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (60425494)
|
研究分担者 |
柳澤 利枝 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主幹研究員 (70391167)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 妊娠期曝露 / ヒ素 / DNAメチル化 / 後発影響 / 腸内細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
有害物質に脆弱と考えられる胎児期の化学物質曝露が、すぐには顕在化せず成長後に疾患として影響が現れる「後発的疾患」を誘導するという実験的研究成果が次々と報告されている。後発的疾患の早期診断や予防医学の確立に向けて、メカニズム解明研究が盛んに行われているが、いまだ不明な点が多い。本研究では、胎児期のヒ素曝露により成長後に肝腫瘍が増加するという実験系を用い、血液及び糞便DNAの経時的な次世代シークエンス解析から、生後の環境要因による変化を乗り越えて持続する血液DNAメチル化変化及び腸内細菌叢変化を解析し、メカニズムに基づく新規予防医学の確立に向けた情報を提供する。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、妊娠8~18日まで85 ppmの亜ヒ酸ナトリウム (ヒ素、NaAsO2)を含む水を与えたC3Hマウス(ヒ素群)とヒ素を含まない水を与えたC3Hマウス(対照群)から生まれた仔を、個体識別し、飼育を開始した。同一個体ごとに、離乳時から74週齢まで16週ごとに、糞便及び、尾から血液を経時的に採取する計画であり、現在、48週齢での血液及び糞便の採取をおこなっているところである。またQIIME2を用いた腸内細菌叢解析法について、トリミングの過程におけるクオリティスコアなどの条件を精緻化した。 精緻化した解析法を用いて、33週齢における対照群オスとヒ素群オスでの腸内細菌叢解析をおこなった。予備的な検討ではあるが、ヒ素群では、α多様性が減少傾向であり、個体によって細菌叢の組成が異なる傾向があることがわかった。また、Taxonomy解析により、特定の個体は、肝発がんに関与する腸内細菌叢が変化していることもわかった。今後、経時的なサンプル採取と解析を続けていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、妊娠8~18日まで85 ppmの亜ヒ酸ナトリウム (NaAsO2)を含む水を与えたC3Hマウス(ヒ素群)とヒ素を含まない水を与えたC3Hマウス(対照群)から生まれた仔を、個体識別し、飼育を開始した。また、QIIME2を用いた腸内細菌叢解析法について、トリミングの過程におけるクオリティスコアなどの条件を精緻化した。予備的な検討ではあるが、33週齢における対照群オスとヒ素群オスでの腸内細菌叢解析をおこない、ヒ素群では、多様性が減少傾向であり、個体によって細菌叢の組成が異なる傾向があること、また、Taxonomy解析により、特定の個体は、肝発がんに関与する腸内細菌叢が変化していることを明らかにできたため、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、妊娠8~18日まで85ppmのヒ素を含む水を与えたC3Hマウス(ヒ素群)とヒ素を含まない水を与えたC3Hマウス(対照群)から生まれた仔で検討を続ける。同一個体ごとに、離乳時から4か月ごとに、糞便及び、尾から血液を経時的に採取する。74週齢での肝がんの有無と対応させ、各週齢の糞便及び血液からDNAを抽出する。DNAメチル化解析は、網羅的なメチル化解析法の1つであるReduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)法で実施する。対照群に対してヒ素群でメチル化が10%以上上昇または低下したCpGをDifferentially Methylated Cytosine (DMC)とし、各CpGのannotation の付与はHomerで行う。糞便中腸内細菌叢は、16S rRNAのV4領域を次世代シーケンサーでシーケンスし、QIIME2を用いた相同性検索及び系統分類解析を実施する。これらの経時的な解析から、持続したDNAメチル化変化X及び腸内細菌叢変化Yを探索する。持続した変化X及びYが見つかった場合、遺伝子の発現調節に関する分子や、腸内細菌産生物や代謝物の機能について、細胞増殖などがんの形成及び進行への影響に焦点をあて細胞株を用いて解析する。 以上から、生後の環境要因による変化を乗り越えて持続する血液DNAメチル化変化及び腸内細菌叢変化を解析し、胎児期ヒ素曝露による後発的肝がん発症の直接的なメカニズムの一端を解明する。
|