研究課題/領域番号 |
22K19694
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 学長特命教員(特別顧問) (20191190)
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研究分担者 |
月山 淑 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90264895)
向 友代 和歌山県立医科大学, その他部局等, 看護師長 (20939847)
山田 忍 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 准教授 (20611057)
下川 敏雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00402090)
勝田 将裕 和歌山県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (50464673)
速水 晋也 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (00468290)
西川 彰則 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (70618199)
太田 茂 和歌山県立医科大学, 薬学部, 教授 (60160503)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 緩和ケア / 仮想現実 / 脳内ホルモン |
研究開始時の研究の概要 |
情報通信技術(ICT)のなかでも拡張現実(Augmented Reality:AR)・仮想現実(Virtual Reality:VR)など、仮想の世界をより現実的に体験できる技術が発展してきた。本研究は、自宅に帰れないがん終末期患者に対して、自宅仮想現実映像を応用してプログラム提供前後の身体的・精神的変化を量的・質的に観察研究することで、がん終末期患者のQuality of Life ( QOL)、およびQuality of Death (QOD)が改善することを研究目的とする。本研究の推進により、患者さんに全く新しい未来医療を提供できる。
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研究実績の概要 |
がん終末期患者は、最期まで家族・友人・社会とのつながりを希求しているのが現状である。われわれ医学部・保健看護学部・薬学部の共同プロジェクトチームは、AR/VR技術の緩和ケアへの応用に際して、患者にとっての非日常環境を新たに仮想体験することではなく、患者が自宅や職場などの入院前に日常であった環境に移動し、家族・友人とリアルタイムに会話しているような仮想体験が患者満足度に繋がると考えており、終末期であっても社会とのつながりを感じる緩和ケアを提供することで身体的苦痛・心理的苦痛の緩和を実現することが最終目的である。 本研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) の世界的流行期において、自宅に帰れないがん終末期患者に対して、自宅仮想現実映像を応用してプログラム提供前後の身体的・精神的変化を量的・質的に観察研究することで、がん終末期患者のQuality of Life ( QOL)、およびQuality of Death (QOD)が改善することを研究目的としている。 令和4年度は、質的評価をおこなうためがん終末期入院患者に対する日常診療下での緩和ケアとして提供される自宅仮想現実映像を用いた緩和ケアプログラムに参加する患者に対して、インタビューを実施し評価する前向き観察研究を実施した。在宅ケアを受けることが困難ながん患者 4 名の被験者に非構造化インタビューを実施した結果、「家族を身近に感じる安心感による入院の苦痛の緩和」、「日常生活を取り戻すためのVRの活用」、「家族と同じ空間にいる没入感」、「VR体験による家族との別れの臨場感による孤独感」の4クラスターが抽出された。テキストマイニングに基づく参加者の入院に関する苦痛の緩和に関する調査から、緩和ケア環境の中で自宅のバーチャルリアリティ画像を利用することの有用性が示唆された。研究結果を論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)自宅仮想現実映像の質向上; 分身ロボットと搭載する360°カメラ・VRの開発(令和4年) 本研究で用いる分身ロボットは元々重度障害のため外出困難な人々が分身として活用するために開発された。5G回線により分身ロボットが患者の動作と連動して自宅内を移動し、患者はバーチャルな映像を病院で仮想体感し家族とのコミュニケーションを図ることができるような技術開発を目指していたが、3Dカメラを搭載することが困難であったため、別の方法を検討・調整中である。患者が自宅にあるロボットを遠隔で操作・移動させることで患者があたかも自宅内を自由に移動している仮想体験を可能とすること、患者家族が病院と自宅の画像をリアルタイムに同時に共有することができることを最重要課題とし、院内でロボットを用いてシミュレーションを実施している。 (2)がん患者および家族の身体的・精神的変化の量的・質的分析(令和4年・5年) 質的評価として被験者4名に対しテキスト・データの分析を行い有用性が示唆された。量的評価としては、プログラムの有用性を調査するための本研究の主要評価項目はVR動画共有実施前日と実施後におけるPOMS 2(Profile of States 2)成人日本語版短縮版を用いた総合的気分状態(TMD)の変化とし、副次評価項目として、1)POMS 2成人日本語版短縮版による各尺度、2) HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)日本語版による抑うつと不安感の変化、3)VRデバイスの有害事象調査、4)緩和ケアプログラムに参加する患者家族を対象にPOMS 2による総合的気分状態と各尺度を測定しているが、被験者4名であるため、量的分析は今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は緩和ケア病棟がコロナ感染症対応病棟へ転用されたことやがん終末期の入院そのものが激減したこと、患者家族と医療従事者の面談機会も減っていたことから、VRプログラムの被験症例数を増加させられなかった。令和5年度には緩和ケア病棟が再稼働することにより、症例参加を積極的に募っていき、患者・家族の総合的気分や抑うつなどの量的評価へ結びつける。 分身ロボットをすでに購入、360度カメラを装着して遠隔にリアルタイムで自走させることができた。令和5年5月中にVRゴーグル装着下での操作や通信媒体による即時性の検証(ソフトウェアの検証を含む)を行なう。この際に同時同期するソフトウェアが最新型3Dカメラにしか対応していないため、試用後に問題なく同時同期できることが検証されたら最新型3Dカメラを購入する。その後に患者自宅もしくは職場などへの搬送・組み立てについてのシミュレーションを行う。これらを安全・簡便に行えるように担当医師や看護師とも連携して患者・家族に指導する。 がん終末期患者や長期入院が予想される患者には積極的に入院時にこれらのプログラムについて説明し、院内でのデモンストレーションも行い、患者の望む社会的なつながりを感じられる場所へ分身ロボットの持ち出しを勧める。コロナ感染症による患者・家族の面会制限は解除されても病状進行による衰弱、感染対策、麻痺等の身体的要素や老々介護、住居環境、独居など社会的理由で自宅退院出来ない患者は存在する。これらの患者に対してVRプログラムを実施し自宅仮想現実映像を提供することで患者・家族のQOL向上に貢献できることを確信して、より患者の自由意志で自宅体験が出来る自走式ロボットによる同時性仮想現実映像に取り組む。
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