研究課題/領域番号 |
22K19706
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 (2023) 金沢大学 (2022) |
研究代表者 |
岡本 成史 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50311759)
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研究分担者 |
唐島 成宙 金沢大学, GS教育系, 准教授 (30801584)
南保 英孝 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (30322118)
細道 一善 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (50420948)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 腸内細菌叢 / ディスバイオーシス / IgG4血症 / 性差 / 脂質異常症 / 因果推論 / LiNGAM / 生活習慣病 / フレームワーク / 説明可能な人工知能 |
研究開始時の研究の概要 |
GMの構成変化による細菌群の代謝変化がもたらす宿主における代謝異常とそれに伴う各種生活習慣病の発症には、特定の菌種単独による代謝作用だけでなく、GM間での代謝ネットワークを介した相互代謝作用が主に関与すること、そしてGM中の複数の細菌種の相互作用を明らかにすることで、各種生活習慣病の発症ならびに症状悪化リスク評価が可能となることを実証し、上記関連性を明確にするフレームワークの開発を目指す。
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研究実績の概要 |
我々は、腸内細菌叢のディスバイオーシスと疾患発症リスクとの関連について線形非ガウス非環式モデル (LiNGAM) を使用した機械学習による統計解析手法というこの分野では用いられていなかった方法を用いて検討を行い,脂質異常症においてその関連性があることを明らかにした。今年度は同様の方法によってその他の疾患にも腸内細菌叢のディスバイオーシスとの関連が認められないか検討を行った。今回注目したのは血中のIgG4値が上昇し肝臓、膵臓、唾液腺などの臓器に炎症を引き起こす、いまだ原因不明の難病であるIgG4関連疾患である。一般人を対象に血清中のIgG4値と腸内細菌叢構成を測定し、IgG4値の中央値に応じて高IgG4群と低IgG4群に分けた上で、2群における腸内細菌叢構成の違いについて検討した。ANCOVA、Tukey の HSD、線形判別分析の効果量、最小絶対収縮および選択演算子ロジスティック回帰モデル、および相関分析により、Anaerostipes、Lachnospiraceae、Megasphaeraおよび[Eubacterium] Halliiグループは女性の IgG4 レベルと関連し、 Megasphaeraグループは女性の IgG4 レベルと関連していることが明らかにした。 また、[Eubacterium] Halliiグループ、Faecalibacterium、Ruminococcus、Romboutsia は男性の IgG4 レベルと関連していた。線形非ガウス非環状モデル解析により、Megasphaera、[Eubacterium] Halliiグループ、Anaerostipesは、女性の IgG4 レベルとの推定因果関係を示した。IgG4血症は男女差があるが、それに従属する形でIgG4値と細菌叢構成の違いに一定の相関がみられることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線形非ガウス非環式モデル (LiNGAM) を使用した機械学習による統計解析手法というこの分野では用いられていなかった方法を用いて検討を行い、腸内細菌叢のディスバイオーシスと各種疾患発症リスクとの関連性について一般市民を対象としたコホート研究を用いて検討を行い、前年度の脂質異常症との関連に続き、今年度はIgG4血症との関連を見出すことに成功した。特にIgG4血症の発症に性差があるが(女性の方が男性より発症頻度が高い)、今回の結果は、その性差も反映させたものであり、これまで発症における原因が不明であったIgG4血症について、細菌叢のディスバイオーシスの特徴から検討を進めることで手がかりがつかめる可能性を示唆した。また、ディスバイオーシスの傾向についてさらに詳細解析を行うことでIgG4血症発症リスクの診断に応用できる可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、各種生活習慣病発症と関連する細菌(群)とその細菌(群)の有する代謝経路データをLinear non-Gaussian Acyclic Modelを用いて統合、因果推論することにより、3群間の因果関係を探索する。さらに同解析により見出された細菌(群)が有する各種生活習慣病発症に直結する代謝反応が実際に見られるか否かをin vitroでの代謝反応実験および、代謝産物の質量分析により確認する。以上のデータを総括して生活習慣病-細菌(群)―代謝反応に関する相互ネットワークを解明する。予定していた疾患マウスを用いた系については、研究代表者と研究分担者の異動が相次ぎ、実行が難しくなったため割愛し、研究項目で得られた結果をXAIによりMLモデルとサロゲートベイジアンモデルを組み合わせて解析し、疾患を改善させるために必要なGM構成に至るための経路確率を計算する。このフレームワークを各種生活習慣病の各々に作成後、統合し、複数の生活習慣病を改善させる腸内環境へ至る効率的な経路を提示する。
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