研究課題
挑戦的研究(萌芽)
アポリポ蛋白EをコードするAPOE遺伝子には、3つの主要多型(APOE2、APOE3、APOE4)がある。そのうちAPOE4(人口の約15%が保有)は、最も強いアルツハイマー病リスク遺伝子であり、脳アミロイド病理(≒神経細胞が分泌する老廃物蓄積)を悪化させることで、認知症発症を促進する。本研究では、APOEを豊富に発現する肝臓に焦点をあて、“肝臓のAPOE4発現は脳アミロイド蓄積の促進因子か?というきわめてユニークな問いを、多面的な動物モデル実験を行うことで検証する。
APOE遺伝子には、3つの主要多型(APOE2、APOE3、APOE4)がある。そのうちAPOE4は、最も強いアルツハイマー病リスク遺伝子であり、脳アミロイド病理を悪化させることで、認知症発症を促進する。本研究では、APOEを豊富に発現する肝臓に焦点をあて、“肝臓のAPOE4発現は脳アミロイド蓄積の促進因子か?というきわめてユニークな問いを、多面的な動物モデル実験を行うことで検証する。具体的には、認知症リスクの上昇しないAPOE3を対照とし、▼肝特異的なAPOE4遺伝子導入を行い、脳Aβ病理が促進されるかを決定し(目的1)、▼肝特異的なAPOE4発現抑制を行い、脳Aβ病理が抑制されるかを決定する(目的2)。そのために、次の3年間で以下の研究を行う。すなわち、①肝特異的なAPOE4発現マウスの作出、②肝特異的なAPOE4発現マウスにおける脳アミロイド/背景病態の解析、③アンチセンスオリゴ投与による肝特異的なAPOE4発現抑制方法の確立、④肝特異的なAPOE4発現抑制マウスの作出と脳アミロイド病理の解析、である。令和4年度はそのうち①と③を遂行した。①肝特異的なAPOE4発現マウスの作出:申請者らが保有するヒト化APOE技術を基盤に、肝臓特異的にAPOE4を発現するマウスの作製を進めた。③アンチセンスオリゴ投与による肝特異的なAPOE4発現抑制方法の確立:申請者らは培養細胞に対し効果的な分子APOE抑制効果をもつASO配列をすでに同定している。令和4年度は、そのASO配列が生体内でも同様のAPOE抑制効果を示すかの検証を行った。具体的には、異なる週齢のマウスに肝臓特異的なASO投与を行い、APOEのmRNA発現量をリアルタイムPCR検査により比較・定量するための準備を進めた。現在、投与方法/条件の最適化を継続している。
2: おおむね順調に進展している
上記概要に記したように、本研究課題は①-④の研究項目から構成されている。令和4年度は、①③の前半部分を遂行することが計画されていた。以下に再掲するように、これらの研究計画は概ね予定通りに開始できた。そのため、全体の進捗としては「おおむね順調に進展している」と考えられる。①肝特異的なAPOE4発現マウスの作出:申請者らが保有するヒト化APOE技術を基盤に、肝臓特異的にAPOE4を発現するマウスの作製を進めた。③アンチセンスオリゴ投与による肝特異的なAPOE4発現抑制方法の確立:申請者らは培養細胞に対し効果的な分子APOE抑制効果をもつASO配列をすでに同定している。令和4年度は、そのASO配列が生体内でも同様のAPOE抑制効果を示すかの検証を行った。具体的には、異なる週齢のマウスに肝臓特異的なASO投与を行い、APOEのmRNA発現量をリアルタイムPCR検査により比較・定量するための準備を進めた。現在、投与方法/条件の最適化を継続している。
令和5年度も応募時の申請書に記した内容に沿って遂行する。具体的には、上記①:APOE-floxマウスと交配するCre-loxpマウスの導入と繁殖を進める。その後、APOE-floxマウスとCre-loxpマウスの交配を行い、目的臓器特異的なAPOE4化が得られることを生化学的な解析により確認する。上記③:ASO投与を行ったマウスを飼育し、ASO投与後の体重増加や生存に影響がないかの長期的な毒性の評価を行う。また、①③において今後使用予定のアミロイドマウスのコロニーの拡大に着手する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
JCI Insight
巻: 8 号: 7
10.1172/jci.insight.163822