研究課題/領域番号 |
22K19712
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 老化 / 細胞周期 / 希少糖 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、老化を「細胞で生じる疾患」と捉え、細胞老化 (cellular senescence) の分子機構の解明が世界レベルで進んでいるが、有効な老化予防法は開発されていない。これに対して申請者は最近、単糖類である希少糖・ D-alloseが、ヒト細胞周期を停止(静止)させることなく、周期速度を減速させることを発見した。そこで本研究では、香川大学の持つグリコバイオロジーの知と技術を集結させ、D-allose によって生じる「細胞周期の減速(細胞スローサイクリング)」が、細胞老化を抑制することを細胞・生体レベルで実証し、全く新しい視点の老化予防薬開発につなげることに挑戦する。
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研究実績の概要 |
近年、老化を「細胞レベルで生じる疾患」と捉え、細胞老化 (cellular senescence) の分子機構の解明が世界レベルで進んでいるものの、有効な老化予防法は開発されていない。これに対して本研究では、単糖類である希少糖・D-allose によって生じる「細胞周期の減速(細胞スローサイクリング)」が、細胞老化を抑制することを細胞・生体レベルで実証し、全く新しい視点の老化予防薬開発につなげることに挑戦する。初年度の2022年度には、D-alloseが培養ヒト細胞周期を停止(静止)させることなく、周期速度を減速させることを特許出願した。さらに、細胞周期の変化で異なる蛍光を発色する Fucci ベクターを培養ヒト血管平滑筋細胞に導入し、電動倒立顕微鏡蛍光タイムラプスを用いて、細胞周期を可視化できる実験システムの構築を実施して、D-allose が細胞スローサイクリングを生じることをシングルセルレベルで可視化することにより実証した。また、D-allose を投与後の細胞内への D-allose取り込みをHPLC法で実証し、フラックスアナライザー(プライムテック社)を使用して、D-allose によるミトコンドリア呼吸と解糖系の細胞内エネルギー代謝への影響を同定した。一方、C57BL/6 マウスの老化モデルは1年以上の経過観察が必要であるため、初年度の早期から飼育を開始している。今後、これらの実験を継続することにより、D-allose の「細胞スローサイクリング」を介した細胞老化の予防効果を細胞・生体レベルで実証し、全く新しい概念の老化予防薬の開発につなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の2022年度には、D-alloseが培養ヒト細胞周期を停止(静止)させることなく、周期速度を減速させることを特許出願した。さらに、細胞周期の変化で異なる蛍光を発色する Fucci ベクターを培養細胞に導入し、細胞周期を可視化できる実験システムの構築を完了し、実際にD-allose が細胞スローサイクリングを生じることをシングルセルレベルで可視化することにより実証した。また、D-allose を投与後の細胞内への D-allose取り込みをHPLC法で実証し、フラックスアナライザー(プライムテック社)を使用して、D-allose によるミトコンドリア呼吸と解糖系の細胞内エネルギー代謝への影響を同定した。 一方、C57BL/6 マウスの老化モデルは1年以上の経過観察が必要であるため、予定通り初年度の早期から飼育を開始している。しかし、52週齢の オスのマウスが手に入らなかったため、9週齢からの 飼育となっており、 2023年に実施する動物実験における評価が、半年以上遅れる可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、初年度に出願した特許についてPCT出願を行う。また、エンドヌクレアーゼによって細胞が生じるDNAの切れ目(ニック)を修復した際に蛍光物質が発現するベクターを作製し、これを培養ヒト血管平滑筋細胞に導入することによって、ストレス誘導性細胞老化を生じる原因となるDNA損傷修に対し、D-allose が修復能を示すことを証明することにより、D-allose による細胞老化抑制作用をin vitro で実証する予定とする。一方、初年度の2022年度から飼育した104週齢の老化したマウスの骨格筋を摘出し、重量の測定後、骨格筋組織評価、SA-βgalの測定、サイクリン依存性キナーゼ (p16INK4a, p21Waf/Cip1/SDI1) 発現、SASP因子(CXCR2, IL-6, GROα, VEGF, MMPs, PAI-1など)、それを制御する転写因子(C/EBPβ, NF-κB, BRD4)やエピジェネティックな変化(ヒストンH3のジメチル化)などを検証する予定とするが、初年度に若齢マウスしか購入できなかったことから、2023年度は初年度に引き続きマウスの飼育と観察の継続になる可能性が高い。
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