研究課題/領域番号 |
22K19721
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
大鶴 直史 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (50586542)
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研究分担者 |
平田 晃正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00335374)
ゴメスタメス ホセデビツト 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60772902)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 恐怖記憶 / 不安定状態 / tACS / MEG / 脳磁場計測 / 経頭蓋交流電流刺激 |
研究開始時の研究の概要 |
長引く原因不明の痛み(慢性疼痛)には、痛みの恐怖に対する記憶が関連している可能性が示されている。しかしながら、一度形成されてしまった恐怖記憶を選択的に消去することは難しい。そこで本研究では、痛みの恐怖記憶が消去されやすい状態(不安定状態)に関与する脳内ネットワークを、高精度な脳機能計測手法である脳磁場計測装置を用いて同定することに挑む。 もしネットワークが同定されれば、そのネットワークを経頭蓋交流電流刺激を用いて強化することで、恐怖記憶の消去効果が高まるかを検証する。 一連の研究で、痛みに対する恐怖記憶の効率的な消去技術の創成に挑む。
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研究実績の概要 |
本研究は、恐怖記憶を消去するための不安定状態に関与する脳内ネットワークを同定し、そのネットワークに経頭蓋交流電流刺激(transcranial alternating current stimulation:以下tACS)を用いて人為的介入を行うことを目的としている。当該研究の遂行のためには、適切な恐怖記憶形成および消去のパラダイムを考えること、かつtACSを従来のものよりも高精度化することが重要となる。そこで、本年度はまず、脳内電界シミュレーションによる至適な電極配置および電界強度の強さを検証した。恐怖記憶に関連する背外側前頭前野、島皮質を対象としたシミュレーションを実施した。具体的には、個人ごとにMRIで撮像したT1およびT2強調画像から、頭部を皮膚・脂肪・骨・脳脊髄液・白質・灰白質などの組織に分類し、各組織に伝導率を与えることで、tACSで刺激を行った際に脳に生じる電界強度のシミュレーションを実施した。その結果、背外側前頭前野および島皮質を刺激するために、至適だと考えられる電極配置および強度を決定することができた。 その他、恐怖記憶を形成し、消去する実験パラダイムの構築も実施した。11名でデータ取得を行い、7名では恐怖記憶が形成された。今回は消去をメインターゲットとしているが、形成に関してもその神経基盤を明らかにするために、現在脳磁場計測装置(MEG)での計測を進めている。来年度以降に、MEGの解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、恐怖記憶の消去に関連する不安定状態の脳内ネットワーク同定のために、恐怖記憶の実験パラタイムを確立することにあった。本年度は、Psychopyを用いて、特定の画像に対して恐怖記憶を形成させるために、当該画像の提示時にのみ電気刺激を与えるという広く用いられているパラダイムを用いて、予備実験を実施した。11名の被験者で実施したところ、7名の被験者では恐怖記憶が形成された一方で4名には形成されなかった。本研究結果により、消去の前の形成期の神経基盤も同時に検証するために、脳磁場計測装置を用いた脳内メカニズムの検証を開始した。 その他、続く介入研究で使用予定の経頭蓋交流電流刺激(transcranial alternating current stimulation:tACS)に関しても、至適な刺激パラメータを決定するための脳内電界シミュレーションを実施した。30名のMRI構造画像から、背外側前頭前野および島皮質に様々な電極配置でtACSを実施した時に生じる電界のシミュレーションを実施した。その結果、グループレベルで至適だと考えられる電極配置を決定することができた。 上述のように、おおむね研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度に予備実験として実施してきた恐怖記憶形成の実験パラダイムを用いて、恐怖記憶の形成および消去に関する神経基盤を脳磁場計測装置(MEG)を用いて検証していく予定である。具体的には、恐怖記憶の形成期における神経活動および、想起後におとずれる恐怖記憶の不安定状態における神経活動を、MEGを用いて計測する。その後、得られた神経活動データに対して、機能的ネットワークを検討する解析(各脳領域間のphase locking valueの算出)を実施して、恐怖記憶の形成および消去に深く関連する脳内ネットワークを抽出する。 さらに、前年度に実施してきた脳内電界シミュレーションによるtACS刺激パラメータが、真に脳内における特定周波数帯域の活動を変調するかに関しても、MEGを用いて検証する。具体的には、tACSの前後でMEGによる安静時皮質活動を記録し、意図する脳内ネットワークをtACSで変調することができるかを検証する。 また、MEGによる機能的ネットワークの解析も実施するが、その他特定領域の特定周波数パワーが関与している可能性および特定領域の興奮抑制バランスが関与していることも想定し、得られたMEGデータの解析を進める。
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