研究課題/領域番号 |
22K19724
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大和田 祐二 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20292211)
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研究分担者 |
宮崎 啓史 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90803867)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | メラノーマ / 大腸がん / 微小環境 / 脂肪細胞 / 脂肪酸結合タンパク質 / 消化器がん / 多価不飽和脂肪酸 |
研究開始時の研究の概要 |
メタボリック症候群をはじめとする生活習慣病の一因である脂質過剰摂取が、癌をはじめとする様々な疾患に作用するメカニズム解明は急務である。一方で、脂肪組織の“量や質(リポクオリティ)”が皮膚がんや消化器がんの増殖や浸潤にどのようなメカニズムで関与するかについては殆どわかっていない。本研究では、食事摂取によって変化する脂肪細胞内の脂質構成が微小環境構成細胞の活性化に与える影響について検証する。さらに脂肪細胞の長鎖脂肪酸代謝の変化が、がん細胞自身あるいは微小環境を構成する様々な細胞(免疫系細胞や線維芽細胞等)に対して影響を及ぼす際に重要な機能脂質の同定を目指す。
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研究実績の概要 |
メラノーマは、原発巣からの転移により、最も致死率の高いがんの一つである。細胞内脂肪酸シャペロンの1つであり、メラノーマに高い発現を示す脂肪酸結合タンパク質(FABP7)および種々の脂質代謝分子に着目した解析を実施した。CRISPR/Cas9システムによりFABP7を欠損させたメラノーマ細胞(FABP7KO-B16F10)を樹立した。FABP7KO-B16F10およびコントロール細胞(c-B16F10)をマウス皮下に移植し腫瘍径を経時的に観察したところ、FABP7KO-B16F10はコントロール細胞と比較して、腫瘍のサイズが有意に縮小していた。またFABP7KO-B16F10を静脈投与すると、肺の転移巣がコントロールに比べて少ないことが確認された。質量分析によりFABP7KO-B16F10の細胞内脂質プロファイルを質量分析計を用いて解析すると、細胞内の複数の遊離脂肪酸、特に飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸構成比や含有量に変化があることが判明した。これらの結果は、FABP7が欠損により脂肪酸の輸送が阻害されることでメラノーマの生物学的悪性度に影響を及ぼしていることが明らかとなった。またFABP7KO-B16F10をマウス皮下移植を行い、肺への遠隔転移について調べてみると、コントロールに比べてKO細胞では遠隔転移の割合が明らかに低下していることが明らかになった。現在はKO細胞の浸潤・遊走能を培養細胞レベルで評価し、その分子メカニズムを検討している。以上の結果は、日本解剖学会総会および結果の一部を日本分子生物学会にて発表を行った。 上記と並行して高脂肪食摂取が癌の微小環境を構成する免疫系細胞、さらには食事性脂質の摂取によって脂肪滴の脂質構成が変化すると考えられる脂肪細胞に与える影響について解析を進めている。これまでにマウスから脂肪細胞の初代培養系の樹立を鋭意進めているが解析に十分な細胞数を分取するための条件検討に少し時間を要している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メラノーマ細胞や大腸がん細胞の移植モデルを構築し微小環境を構成する細胞における脂質関連タンパク質の発現解析は順調に進んでいる。一方で高脂肪食を給餌後の担癌マウスモデルについてはモデルの増殖アッセイ等を進めている。上記と並行して高脂肪食摂取が癌の微小環境、特に脂肪細胞に与える影響について解析を進めている。これまでにマウスから脂肪細胞の初代培養を試みているが、いまだ安定した培養系の樹立に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
脂質の摂取が脂肪細胞の脂質環境に影響することで、種々のガンの生物学的特性に影響を与えるか否かの仮設を検証するために、脂質コントロール食と通常食を給餌したマウスからの脂肪細胞の分離に注力する。これまで得られたFABP7KO-B16F10の解析結果については論文化を進める。
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