研究課題/領域番号 |
22K19736
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
牛山 潤一 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (60407137)
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研究分担者 |
野崎 大地 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70360683)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 伸張反射 / 経頭蓋磁気刺激 / 一次運動野 / ロボットマニピュランダム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,アスリートの上肢運動における潜在的な運動修正能力に着目し,運動を妨害する外乱(機械的摂動)に対して,筋の長さを自動的に元に戻す応答である伸張反射をどのように利用しながら,競技特異的な上肢操作を実現しているのかを調査する.計算論的神経科学と運動生理学を融合した研究アプローチを用いて,複数の競技アスリート間での共通点・相違点を明らかにする.これらを通じて,アスリートの運動機能の特殊性・卓越性を科学的に明らかにし,幼少期からのタレント発掘や能力伸張のためのトレーニング法の開発の礎を築くするとともに,身体運動の適応性を引き出すスポーツの学術的価値を再考する契機とする.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,アスリートの上肢運動における潜在的な運動修正能力に着目し,運動を妨害する外乱(機械的摂動)に対して,筋の長さ変化に対する反射応答である伸張反射をどのように利用しながら,競技特異的な上肢操作を実現しているかを究明することである.2年目にあたる2023年度は,ロボットマニピュランダムKINARMを用いて,力場環境下におけるふたつの上肢姿勢保持課題を作成した.ひとつは左右肢が独立した姿勢を制御する課題,もうひとつは左右肢を協調して姿勢を制御する課題である.課題中にランダムなタイミングで左右どちらかに機械的摂動を与え,摂動肢/非摂動肢にどのような伸張反射応答が検出されるかを表面筋電図から評価した.また,2022年度末の課題であった,経頭蓋磁気刺激をもちいて皮質活動の関与を検証するプロトコルも同時に構築し,実験系に組み込んだ.一般健常者30名を対象に実験を積み上げた結果,摂動を受けた側の上肢に伸張反射応答がみられるのはもちろんのこと,摂動を受けていない側の上肢にも伸張反射区間(とくに,比較的潜時の長い伸張反射成分)に筋活動変化がみられること,この非摂動肢の応答が両課題間で異なるという結果が得られた.さらに,経頭蓋磁気刺激を用いて伸張反射に対する一次運動野の関与を検証した結果,摂動肢だけでなく,非摂動肢の支配領域の興奮性課題も課題によって柔軟に変調されていることが明らかとなり,両腕運動における運動皮質を介した反射応答の調整機構の実態がかなりクリアにみえてきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は経頭蓋磁気刺激実験のシステム構築が完了し,複数の運動課題における伸張反射調整とそれに対する皮質活動の関与を同時検証する計測プログラムが完成した.その成果もあり,データ収集が飛躍的に進み,従来の想定以上のスピードで研究が推進できている. 成果としては第17回Motor Control研究会における国内学会発表,Neuroscience2023における国際学会発表を通じて国内外の研究者たちと議論を重ねることができた.現在は,2023年度の成果をベースとした原著論文の執筆中であり,2024年度夏前までには投稿できる予定である.また,2024年6月に開催されるInternational Society of Electrophysiology and Kinesiologyでの国際会議発表に向けた準備を進めている.さらには,2024年8月に予定されている第18回Motor Control研究会,第47回日本神経科学大会,2024年11月にシカゴにて開催予定のNeuroscience 2024などにて,新たなデータに関する発表も実施予定であり,当該領域の専門家たちとディスカッションを重ね,本研究全体を取りまとめた次なる学術論文の執筆に向かっていく.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度に推進すべき課題は,以下の3点である.1)ここまでは,両腕ともに肘伸展という,同名筋同士を収縮させる課題に限定的に検証してきた点である.日常動作では左右肢の使い方は必ずしも対称ではない.このことに留意し,現在は片方が肘伸展,もう片方が肘屈曲という,異名筋同士の協調課題についても計測プログラムを作成し,これを検証している.2)皮質と脊髄とを結ぶ「どの経路」が伸張反射の調整に寄与しているか,という問いにアプローチすることである.この問いの検証のために,新たに音刺激を用いて網様体の関与を検証するプロトコルを作成し,これを実験に組み込むことを計画している.これによって,伸張反射の調整が,皮質と脊髄とをむすぶ直接経路によって調整されているのか,網様体を経由して脊髄にいたる間接経路によって調整されているのかが明らかになるはずである.3)本研究の核ともいうべき,アスリート応用である.すでに予備的検討を通じて,伸張反射の調整動態自体が一般健常者とアスリート(体操選手)では大きく異なる,ということについてはかなり大きな確信を得ている.これがどのようなメカニズムに支えられているかの検証にいたるまで,確かなプロトコルを作成し,2024年度に成果をまとめていきたい.
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