研究課題/領域番号 |
22K19742
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
田添 歳樹 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (60513017)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 脊髄刺激 / 運動制御 / スポーツ / 可塑性 |
研究開始時の研究の概要 |
脊髄はこれまで単に脳の運動信号を筋へ送る中継路としてとらえられており、運動学習を担う固有の神経回路が存在するとは考えられていなかった。本研究では、運動トレーニングが後天的に特定の運動パターンに特化した脊髄神経ネットワークを形成するという仮説を立て、非侵襲的脊椎磁気刺激を応用してヒト被験者の脊髄神経回路の働きと刺激により誘発される身体運動の関わりについて神経生理学的、運動学的な検証を行い、ヒト脊髄に固有の運動パターンを学習・記憶するトレーナビリティがあることの証明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、運動トレーニングよって運動パターンの特徴を反映した神経ネットワークがヒト脊髄神経回路において後天的に形成されるか検証することを目的としている。研究の1年目にあたる2022年度は、ヒト脊髄において特定の下肢運動パターンの生成に関連する特異的な神経ネットワークが存在するかを検証した。 健常成人被験者を対象に、経脊椎磁気刺激を腰背部から与えることで両下肢律動運動が誘導できることが明らかとなった。また、経脊椎磁気刺激の刺激強度や刺激部位の違いによって誘導される両下肢律動運動のパターンが変調することも見出した。刺激強度が低い場合には、両下肢が同位相で律動するホッピング様運動が誘導されるのに対し、刺激強度が高くなると左右の下肢が逆位相で律動する歩行様運動が誘導されることが分かった。また、磁気刺激を与える刺激コイルの位置を第1腰椎と第2腰椎の椎骨間近傍で正中から数cm外側に設定すると、歩行様運動を高い確率で誘導できることも明らかとなった。刺激位置がそれよりも吻側や尾側の椎骨間に近い場合は、ホッピング様運動の誘導率が高くなった。これらの結果は、歩行やホッピングのような下肢運動パターンの生成に関連する神経ネットワークがヒト脊髄内に存在することを示している。また、刺激条件によって異なる運動パターンを誘導できることから、脊髄内にはそれぞれの運動パターンを生成する別々の神経モジュールが存在する可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の1年目において、当初計画していた通りに、ヒト脊髄内に歩行やホッピングのような下肢運動パターンの生成に関連する神経ネットワークが存在していることを示すことができた。また、この過程で経脊髄磁気刺激によって下肢律動運動を効率良く誘導する条件を見出すことに成功し、2年目以降の実験パラダイムを構築する上で有益な知見と実験技術が蓄積できている状態にある。現在も、継続的に経脊椎磁気刺激を用いた実験を継続しており2年目以降の研究計画を遂行するための予備実験を滞りなく行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の2年目にあたる2023年度は、短時間の下肢の随意運動を実施することでヒト脊髄の運動神経ネットワークに即時的な介入効果が得られるかを検証する。 実験では、健常成人を対象に、経脊髄磁気刺激を介して誘導される下肢運動をプローブとして、短時間の下肢随意運動の介入を実施し、介入前後で経脊椎磁気刺激によって誘導される下肢運動を比較する。また、介入に用いる随意運動のパターンと刺激で誘導される運動パターンとの類似性についても調査し、運動パターンに特化した可塑的効果をヒト脊髄神経回路において見出すことができるかを検証する。
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