研究課題/領域番号 |
22K19748
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
|
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
水村 真由美 (久埜真由美) お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60292801)
|
研究分担者 |
阪口 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40205737)
橋本 有子 お茶の水女子大学, 教学IR・教育開発・学修支援センター, 講師 (50826972)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
|
キーワード | 音楽性 / 舞踊動作 / 身体表現 / 定量的分析 / 定性的分析 / 拍 / 鑑賞 / 印象特性 / 稚拙性 / ダンス / 動作分析 / 舞踊 / 質的個性 |
研究開始時の研究の概要 |
ダンスの多くは、音楽と共に演じられる。そのスキルは、動作と音楽との関係性として「音楽性(musicality)」といった言葉で評されるが、ダンスにおける音楽性の概念については不明な点が多い。そこで本研究は、バレエを対象に、舞踊動作を定性(Laban/Bartenieff Movement Studies/System)および定量(モーションキャプチャー)分析手法を用い、音楽情報との関連から、舞踊動作の音楽性をその稚拙さ(ぎこちなさ)を基準に検証し、ダンスの質的個性およびスキルを「音楽性」から検証することを目的とする。身体表現の稚拙さは、巧緻性と比較し個人差が小さいことを仮定し、スキルおよび音楽性の低さに共通する法則を検出する。
|
研究実績の概要 |
本研究はダンスの質的個性およびスキルを「音楽性」から検証することを目的としている。昨年度は、バレエの基本動作を対象に、動作特徴点と音楽の拍との時間ずれを検討し、その成果を、International symposium on Performance Scienceにて発表し情報工学系研究者との意見交換を行った。 今年度は、新たな情報学的分析方法により、詳細な音楽の拍と動作特徴点との関係性を時系列分析で行った。身体運動データは平滑化したのち数値微分により速度や加速度を算出した.また,録音したメトロノーム音(以下、拍音)を分析して拍のタイミングを抽出した.脚部や足部の身体部位や関節角,床反力垂直方向成分の時間変化を解析し拍との時間関係を観察した.加えて各指標が最大・最小値をとる時刻あるいは零になる時刻を試行ごとに算出した.動作は、バレエの指導言語の中から、音楽の拍と動作との関係から近位への動作と拍を合わせる「内取り」と遠位への動作と拍を合わせる「外取り」を意図的に実施してもらい比較検討した。内取りでは脚の内転動作と瞬間を拍音と一致させた対象が多かったものの、内転速度の最大点が拍音に一致していた対象もいた。外取りでは、動作により特徴が異なり、脚の外転最大速度出現が拍音と同期していた事例と.脚を最大外転した時点と拍音と近接していた事例があり、動作により動作と拍の時間的関係性が異なった.跳躍動作では,更に個人差が大きく、接地が拍音と同期する事例,床反力最大点が拍音と同期する事例があり,足の着地や地面に力を大きく及ぼす点が拍音に同期した.これらの結果は,足の着地に伴う聴知覚や触知覚または床を蹴る際の力感が,拍音との同期をとる手がかりとなる可能性を示唆している.また今年度は、Laban/Bartenieff Movement Analysisを用いた分析を開始し次年度の解析の準備を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度の研究成果をInternational symposium on Performance Scienceにて発表した。また今年度は、2種類のバレエの基本動作に加えて、跳躍動作(シャンジュマン)についてもダンサーの身体動作と音楽の拍との時間的な関係性を異なる動作で分析した.その結果,共通して拍音と同期した運動特徴点があるものの、必ずしもすべてのダンサーが同じ特徴点と同期していないこと,動作の違いによって拍音と同期させる感覚のてがかりが異なることが明らかとなった。本研究では、バレエの指導言語として用いられる「外取り」「内取り」という動作と拍音との関係性を示す条件を利用し、バレエを長期経験しているプロダンサーおよびアマチュアダンサーに2種類の片脚支持での股関節外内転動作(タンジュ、ジュッテ)と両足での鉛直方向への跳躍動作(シャンジュマン)という3種類の動作を連続して実施し、動作の運動学および運動力学的特徴量と拍音との関係を分析した。その結果、外取り、内取りという同じ指示言語の元に行われた動作でも、動作の種類によって、運動学的な身体部位の位置と拍音が同期する事例と、運動の最大速度と拍音が同期する事例が確認された。また個人差も大きい可能性が示唆された。一方、跳躍動作に関しては、ジャンプからの着地,両脚の接触と拍音との同期が確認された。これらの結果を考慮すると、着地での聴知覚(音)や触知覚(足底)の知覚的力感が得られる、股関節最大外転の時の足趾の位置といった動作の端点、足趾が床から離れた動作に関しては最大運動速度などが特徴量として検出された。また動作によっては、感覚手がかりよりも、設定された運動目標としての身体部位の位置情報が関わる可能性も考えられた。運動速度は、動作の感覚情報として知覚することは容易でないことから、他の感覚情報を手がかりにしている可能性も考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度になることから、過去2年間の研究成果を学術論文として公表することを第一の目標とする。加えて、昨年度実施した定性分析であるLaban/Bartenieff Movement Analysisでの分析結果と三次元動作解析から得られた結果の共通点および相違点については、新たに2024年度詳細な検討を行う予定である。また本研究の独自性のひとつである動作の「稚拙性」を分析視点の主眼として、過去の研究成果の再検討を行ったうえで、研究成果を集約的にまとめる方向性を検討する。
|