研究課題/領域番号 |
22K19755
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
辻田 忠志 佐賀大学, 農学部, 准教授 (20622046)
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研究分担者 |
川口 真一 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00722894)
伴 匡人 久留米大学, 分子生命科学研究所, 准教授 (00579667)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 低酸素 / PHD / HIF / 低酸素応答 / 低分子化合物 / PHD-HIF系 |
研究開始時の研究の概要 |
抹消小規模塞栓の形成、解消の繰り返しは低酸素障害や慢性炎症を誘導する。これらの障害が頻発すると糖尿病、神経変性疾患などの成人病を誘導するため、予防や介入法の確立が求められている。血中の酸素濃度が低下すると、PHD群によるHIF-αの水酸化度合いが低下し、HIF-αが安定化し低酸素防御機構が発動される。低酸素に暴露せずにHIF-αを安定化できれば、低酸素障害から組織を保護し、機能回復が加速できる。PHD群の中でPHD1欠失マウスは、構成的な低酸素防御遺伝子の発現に関与するHIF-αの機能を増強し、低酸素刺激に防御的に働くことから、本研究ではPHD1の機能を特異的に阻害する方策の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
体内では微小環境における小規模塞栓が常に形成されては解消され、恒常性が維持されている。塞栓形成は低酸素障害を引き起こし、継続すると慢性炎症となるため、初期の低酸素障害に対する予防や介入法の確立が求められている。低酸素状態の感知応答には、Prolyl hydroxylase domain-containing protein(PHD)群による転写因子Hypoxia inducible factor-α(HIF-α)の水酸化制御が重要な役割を果たす。常酸素下では、HIF-αはPHD群により水酸化後、ユビキチン化され、プロテアソームで分解される。酸素濃度が低下すると、PHD群によるHIF-αの水酸化度合いが低下し、HIF-αが安定化する。HIF-αの安定化は、低酸素ストレスに対する防御機構を強力に発動させることができる。酸素に暴露せずにHIFを安定化できれば、低酸素障害から組織を保護し、機能回復が加速できる。本研究では、既存のHIF活性化剤とは骨格、作用機序を異とするHIF活性化剤の開発に挑戦する。 PHD群にはPHD1、2および3のアイソフォームが存在し、それぞれの立体構造は酷似するため、そのため既存の2-OG類似化合物によって、PHD1、2および3に対して特異的に阻害することは困難とされる。本研究ではPHD1、2および3の細胞内局在に焦点を当て、PHD1は核に、PHD2は細胞質に、PHD3は通常は存在せず、低酸素で誘導的に発現し、細胞全体に局在することを活用し、かつPHD1欠失マウスは、構成的な低酸素防御遺伝子を発現できることから、PHD1の阻害に焦点をしぼり研究することとした。現在までに、我々が所持するPyrzAの低分子化および核移行シグナル付加化合物の合成、PHD1組換えタンパク質の合成までを完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今期は、研究分担者とともにPyrzA誘導体の合成手法を改良し、新たに、低分子型のPyrzA誘導体を作出しした。それぞれについて培養細胞への作用を検証して、7種程度が、つよいHIF誘導活性を維持していることを確認した。さらに、数種のin silicoモデリング系を試して、PHD1/2への結合度が異なる化合物の探索に挑戦した。パラメーターの違いで結合度合いが変化するものの、PHD1にPHD2より強く結合するような化合物を選抜できたが、培養細胞での機能解析はさほど変化がなく、現在in vivoでの検証を進めている。また、本年度は、研究分担者の協力のもと、カイコ個体を活用して、高純度の組換えPHD1およびPHD2タンパク質の調整に取り組んだ。現在PHD1については十分な量を取れるようになったが、PHD2については発現量が少なく再度条件検討を進めている。組換えPHD1を用いて、HPLCでHIF-1αペプチドの水酸化を定量化することで、PyrzA誘導体の活性評価方法も確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、特にPHD2の組換えタンパク質の発現に取り組む。すでにカイコ個体での発現調整に成功はしているものの、精製のためのHisタグがタンパク質内部に巻き込んでしまっているのか、精製をすることができない。現在Hisタグの位置やリンカー領域の挿入をすることで精製を可能とできないか検討している。PHD1のディスロケーター遺伝子のスクリーニングにおいては、PHD1-dsRED、PHD2-GFPの安定発現細胞株の樹立に取り組んでおり、現在選抜中である。低分子型のPyrzA誘導体へ核移行シグナルを付加することであるが、目的とする場所への挿入に難航しており、条件検討を進めている。
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