研究課題/領域番号 |
22K19774
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
津邑 公暁 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00335233)
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研究分担者 |
小泉 透 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20981525)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | Approximate Computing / 非厳密計算 / 値再利用 / 値予測 |
研究開始時の研究の概要 |
非厳密計算は省電力と高性能を両立するパラダイムとして期待を集めているものの,これをアプリケーションに適用する統一的な計算基盤は存在していない.そもそも,各計算の近似化が最終的な出力に及ぼす誤差は強くアプリケーションに依存し,また近似化の方法自体もさまざまであるため,「統一的な非厳密計算の適用方法」ということ自体が検討すらされていない状況にある.そこで本研究では,計算再利用の概念を活用するという新たな着想により,これまでの常識を覆し非厳密計算の統一的適用原理の発見を目指し,その原理に基づく計算基盤を実現する.この計算基盤ではまた,計算近似度の自動調整というチャレンジングな機能実現を目指す.
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研究実績の概要 |
既存の自動メモ化プロセッサの構成を刷新し,アウトオブオーダプロセッサ向けの自動メモ化機構のマイクロアーキテクチャを設計した.このとき,ハードウェアコストが高くならないことおよび高い性能を達成することの両立を目指した.さらに,自動メモ化プロセッサの高速化のために,予測による命令の投機実行を提案した.まず,再利用テストで用いられる入力アドレスを予測し,再利用ロード命令を投機的に挿入することで,再利用テストにかかる時間を短縮できる手法を提案した.また,関数実行で得られる出力値を予測し,関数復帰先の命令を投機的に実行することで,再利用テストに成功した場合の利得を増大させる手法を提案した. これらの改変を施したアウトオブオーダ向け自動メモ化機構の性能を示すために,シミュレーションによる評価を行った.評価の結果,提案したアウトオブオーダ自動メモ化プロセッサは通常のアウトオブオーダプロセッサを最大8.2%上回る性能を確認した.また,入力アドレス予測および出力値予測による命令の投機実行を導入した場合,最大18.4%の性能向上が見られた.これらの結果から,投機的な計算再利用の仕組みが自動メモ化プロセッサの高速化に寄与することを確認できた.一方で性能が低下するプログラムも存在したが,これに対して計算再利用を適用する関数を適切に選択できると仮定した評価を行った結果,既存の研究同様に性能低下が抑えられたことから,計算再利用の適用適否を判断するアルゴリズムに問題があることが判明した.したがって,計算再利用の適用適否を判定するアルゴリズムを修正する必要はあるものの,今回提案したマイクロアーキテクチャは高い性能向上が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計算基盤となるプロセッサモデルの設計・実装を評価するにあたって,現在使用しているシミュレータでは評価精度が十分でないことが明らかになったため,シミュレータの開発にとりかかっている。具体的には,現代的アウトオブオーダプロセッサをベースとした計算再利用機構の設計を行い,これをサイクルアキュレートにシミュレーション可能なシミュレータの開発を行った。その上で,アウトオブオーダプロセッサに適した,計算再利用機構の高速化・省電力化を盛り込み,また,計算再利用のオーバヘッドを抑制するにあたっては値予測のアイディアを導入した。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレータ開発はおおむね完了したため,計算近似度の自動調整機能の検討・実装にとりかかる。この準備として,さまざまな応用アプリケーションの振る舞いを詳細に解析し,入力近似度が出力誤差に与える影響についても調査する。また,新たに組み込んだ値再利用と値予測との融合によるオーバヘッドの抑制,および,ルックアップテーブルの省電力実装について引き続き検討する。
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