研究課題/領域番号 |
22K19779
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
武居 周 宮崎大学, 工学部, 准教授 (40598348)
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研究分担者 |
杉本 振一郎 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40451794)
工藤 彰洋 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (80455097)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 非線形音響解析 / 波動音響解析 / 流体解析 / 連成解析 / 超音波スピーカ / 大規模計算 / 領域分割法 / 人体シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
従来の数値計算の枠組みでは求解困難であるWestervelt方程式に基づく非線形音響現象の 解析を、通常の線形波動音響現象と流体現象との分離反復型の連成計算に変え、かつ、要 素数削減のために高性能要素(PUFEMに基づく関数要素)を用いる非線形音響解析手法の開発に挑戦する。この方法により、従来の線形節点要素で必要となる約50億要素から、人体の形状を表現するために最低限必要な2億要素程度まで削減する。これらの取組により、数値解析解と実測値の両方を用いることで搬送波と音声の距離依存性を初めて明らかにできる。更に、パラメータの選択・調整により連成現象の定式化、解くべき基礎方程式を確定する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、世界的に見て未だ実現していない大空間の非線形音響解析の実現と、それを応用する超音波スピーカの高精度な安全評価と、高品質な再生音の設計手法の確立に挑戦することである。超音波スピーカは、搬送波に超音波を用いるため指向性が非常に高く、観光案内等目的の場所のみに音声を再生できるものであり、近年、3次元音響の基盤技術としても用いられている。反面、大振幅の超音波に人体が長時間暴露した際、超音波の振動エネルギーによる人体内の発熱(熱的作用)と、振動によるキャビテーションの発生(非熱的作用)で健康被害が懸念される。また、復調時に音声波形が歪むことにより、音質が低下する。そのため、再生音の音質評価とあわせて人体の超音波暴露量に対する安全評価を実施することは高臨場感と安全性の両立において必須であるものの、現時点ではこれらが未だ確立されておらず、再生音と超音波人体暴露量双方の高精度な予測技術の開発が求められる。そこで、こで本課題では、代表者がこれまでに高度なバランシング領域分割(BDD)前処理を導入する等して、大空間の高速計算を実現した並列音響解析コード(図1)と、同じ計算アルゴリズムを適用した並列流体解析コードを分離反復型の連成アルゴリズムにより接続することで、Westervelt方程式を解くことなく非線形音響現象を再現できるようにする。更に、これに要素数を削減できる高性能要素 (PUFEMに基づく関数要素)を導入することで、部屋スケールの計算が可能な非線形音響解析手法を実現する。そして、この手法と音場の測定実験を組合せ、前人未到の、超音波スピーカの安全性と再生音質の両方を担保する設計の方法論を確立する。今年度は、開発に必要となる事項について整理し、開発の準備を進めた。具体的な検討内容は、来年度の作業項目、研究チームのミーティング予定、学会等での発表予定についてである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択・研究開始から半年程度の期間であり、調査、開発計画立案が主な実施内容となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度検討した、開発手順に従い、超音波スピーカの非線形音響現象を再現するために、波動音響解析コード:ADVENTURE_Soundと並列流体解析コードとの分離反復連成機能を開発する。加えて、周波数の降下に伴い発生するエネルギーの散逸(熱損失)を表現する音圧に関する時間の1階微分の項を、音響解析側に追加する。流体解析コードは同じくオープンソース・ソフトウエアとして公開されているADVENTURE_sFlowを適用する。連成解析は、互いの解析領域が重複するために、物理現象間の相互通信が全自由度分必要となる。この通信を高効率に行うために、分割した領域において独立に物理量の交換を行う並列Couplerを開発する。更に、従来の線形節点要素では、要素辺長を波長の1/10程度とするメッシュ分割が必要であったが、この条件を緩和して計算量の削減を狙う。特に、解析自由度を低減しつつ同程度の精度が得られる高性能要素 (PUFEMに基づく関数要素)を、両コードへ実装する。この要素は、1要素で1波長分の波形を近似できるため、計算精度の犠牲がない要素数削減が期待できる。計算には、(国研)情報通信研究機構公開の「数値人体モデル」を用いる。
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