研究課題/領域番号 |
22K19786
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伴 祐樹 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任講師 (20789391)
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研究分担者 |
割澤 伸一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20262321)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 味覚 / 順応 / 味印象変化 / 錯覚 |
研究開始時の研究の概要 |
食べ進めることによって甘味や塩味等の味が変化する食物を設計することにより,食事の進行状況に応じて食物に含まれる糖分・塩分量を操作することで,食事全体を通じての食物の味に対する印象を変化させる手法を構築する.HCIの分野では肥満問題を解決する方策の一つとして,飲食物の味や大きさ等の印象変化を行う研究が取り組まれているがいずれも電子デバイスが必要なものが多く,食物自体にアプローチしたものはほとんどない.本研究では,特別な電子デバイスを用いることなく食料品自体に仕掛けを施すことで,同じ材料を用いていても味に対する印象を変化させ,少ない塩分・糖分量で高い味の印象・満足感を提示できる手法の実現を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では,食べ進めることによって甘味や塩味等の味が変化する食物を設計することにより,食事の 進行状況に応じて食物に含まれる糖分・塩分量を操作することで,食事全体を通じての食物の味に対する印象を変化させる手法を構築することを目的とする. 研究初年度となる本年度は,飲料摂取の進行状況に応じた糖分濃度変化が味印象に与える影響の検証について取り組んだ.知覚の操作に有効な糖度の制御方法を探索するために,まず時間的に線形に上昇または下降させる条件での検証を行なった.具体的には,濃度の異なるカルピス飲料が入った30mlのカップを複数用意し,参加者には目隠しした状態で,飲み始めから飲み終わりまで飲料濃度が一定もしくは上昇・下降するように連続して5杯のカップを飲ませ,1,3,5 杯目について甘さ,濃さ,粘性,印象の強さについて質問した.実験の結果,糖分総量は3条件ともに同等なのにも関わらず,下降条件が最も甘味を強く感じやすいということが示唆された. しかし,この実験により課題も多く見られ,まず,小さなカップに入った飲料を何杯も続けて飲むという体験が日頃の飲用と異なり連続した体験となっていない点,そして複数のカップを取り回すため実験実施者の負荷が大きく,適切なタイミングで適切な濃度の印象を参加者に提示するのが困難である点が見出された. そのため,飲用課程に応じて連続的に糖度制御が可能なデバイスを実装した.濃度の異なる飲料が入った2つのタンクからポンプによって飲料を供給し,それを混ぜ合わせた上で参加者に提示することで,2つの飲料の混合率を連続的に変化させて連続的な糖度制御を可能にし,装置から連続的に流れる液体を直接口内へ送ることで,高頻度な腕の運動をせずに連続的に口内へ飲料を供給可能にした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り本年度は,飲料摂取の進行状況に応じた糖分濃度変化が味印象に与える影響の検証について取り組んだ.知覚の操作に有効な糖度の制御方法を探索するために,まず時間的に線形に上昇または下降させる条件での検証を行なった.具体的には,濃度の異なるカルピス飲料が入った30mlのカップを複数用意し,参加者には目隠しした状態で,飲み始めから飲み終わりまで飲料濃度が一定もしくは上昇・下降するように連続して5杯のカップを飲ませるという実験系を構築した. この実験により,飲用課程に基づいた様々な濃度変化を提示した際の味印象の変化を検証する予定であった.しかし実験を進めていく中で,小さなカップに入った飲料を何杯も続けて飲むという体験が日頃の飲用と異なり連続した体験となっていない,そして複数のカップを取り回すため実験実施者の負荷が大きく,適切なタイミングで適切な濃度の印象を参加者に提示するのが困難であるという問題が生じた. この問題を解決するため当初の計画にはなかった,自動で飲料の混合率を制御し時系列的に飲料の糖度を調整可能なデバイスを設計,実装したことにより計画に若干の遅れが生じた. また,当初の予定では2022年度11月にフードプリンタを導入し,固形食物における食事の進行状況に応じた味変化設計手法の構築を進める予定であったが,上記の理由でその前段階である飲料摂取の進行状況に応じた糖分濃度変化が味印象に与える影響の検証が進んでおらず,また購入予定であったフードプリンタの納期が部品不足により後ろにずれ込んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,2022年度に実装した飲料の糖度調整デバイスを用いた実験を行い,食事進行状況のそれぞれの時点における飲料の濃度や,その間の濃度変化の仕方を操作することで生じる全体を通じての味の評価の違いを多量に収集し,全体で含まれる糖分量が同量あっても,甘みに対する印象や飲食に対 する満足感がより高くなる最適な濃度変化を割り出す. 加えて,フードプリンタを導入し,塩気や甘味の濃さの分布をフード3Dプリンタ等を用いて食物内に設計する手法を開発し,食事の進行状況に応じた味変化を食べ物単体で設計できる方法を構築する.飲料の実験で割り出した最適な濃度変化を固形食物にも実装し,飲料と同様に味印象変化が可能かどうかを明らかにする.
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