研究課題/領域番号 |
22K19790
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
日高 昇平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (50582912)
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研究分担者 |
高橋 康介 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (80606682)
鳥居 拓馬 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (90806449)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 四次元知覚 / 不良設定性 / 心的回転 / 対称性 / 空間認知 / 高次元可視化 |
研究開始時の研究の概要 |
経験的には我々の知覚体験は3D空間に限定されているが、3Dを超えた4D知覚の探究はこれまで様々な形でなされてきた。しかし、推論による数学的な高次元空間の理解ではなく、秒単位の瞬時的な4D知覚は未だその可能性も明確ではない。これを踏まえ、本研究は、四次元図形の直接知覚(4D知覚)を可能にする新たな可視化方法およびその知覚の習得方法の開発を目的とする。具体的に、4D知覚の訓練法を構築し、4D心的回転課題にて4D知覚可能性を示す。近年研究代表者らの提案した3D知覚に関する理論は、特殊な場合での4D知覚の可能性を予測する。この予測を実証することで、2D/3D知覚に関する理論の確立および、未踏の高次元知覚への可能性を追究する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、四次元図形の直接知覚(4D知覚)を可能にする新たな可視化方法およびその知覚の習得方法の開発である。四次元構造物(以下n次元をnD等と適宜略)を知覚する人類の試みは短くとも140年の歴史を持ち、4D超立方体(tesseract)の可視化を研究したHinton (1884)まで遡る。その後、時空間としての4Dの理論物理学的な理解は発展したが、直接的な4D知覚は困難であると考えられてきた(Coxeter, 1948)。本研究での4D知覚とは、4D空間上の幾何的構造を数学的・論理的な推論を基に学習すること(Aflalo & Graziano, 2008)や顔等の高自由度物の知覚(Burt & Crewther, 2020)ではなく、3D知覚と同様に秒単位の短時間で空間構造や物体操作を把握する能力を指す(Tyler, 2021)。 具体的に、本研究は理論・実験の両面から4D知覚にアプローチする。 (1)視覚系の入力である網膜像は3D空間のある2D射影で、奥行き情報を失った2D射影から、元の3D構造を推定する不良設定問題を解消すべく逆光学的な推定法が提案されてきた(Marr, 1982)。この枠組みを発展させ、我々が提案する視覚系の理論(日髙&高橋, 2021)は、2D像から3D構造の推定だけではなく、4D空間上の図形の3D射影に対しても疑似逆計算(~4D知覚)の可能性を予測する。本研究はこの理論的な予測に沿って、4D知覚可能な視覚データを模索する。 (2)認知心理学の古典的な研究として、心的な3D構造物の実証に用いられた心的回転課題がある(Shepard, & Metzler, 1971)。3D心的回転課題では、被験者は2つの画像の対を見比べ、それら2つが回転して正確に一致するか否かを判定する。もし被験者が心的に一方の物体を3D回転させ、他方に一致するならば、その一致に必要な最小の回転角に比例した回答時間が予想される。実際Shepardら(1971)は回転角と回答時間の明確な比例関係が示した。この枠組みを4Dに拡張し、4D知覚の検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度には4D空間上の図形の3D射影に対する疑似逆計算方法の開発を完了する予定であったが、この開発が遅れている。その主な理由の一つは、疑似逆計算に中核に相当する理論の構築の過程において、逆推定の計算には、4D空間の上の図形が満たすべき必要条件があることが判明し、この必要条件を満たす図形が存在しない可能性が浮上したためである。これは当初の計画からすれば、計画通りに行っていないという点での遅れではあるが、むしろ4D知覚が困難である理由を説明する新たな理論を構築するという観点では一定の進捗とみることも可能である。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で述べた通り、4D知覚が困難である理由を説明する理論の構築という点では一定の進展があった。4D知覚が不可能であることは経験的には実証困難であるが、理論的な立場からはそれを示すことが可能である。したがって、今後は、本研究の大きな方針の転換も視野に入れ、4D知覚の不可能性の理論的な説明をすることにも注力して研究を進める。
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