研究課題/領域番号 |
22K19801
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
野中 謙一郎 東京都市大学, 理工学部, 教授 (30298012)
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研究分担者 |
高柳 英明 東京都市大学, 都市生活学部, 教授 (70344968)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 電動車いす / 自動運転 / 群集流動 / モデル予測制御 / 確率分布 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢化が進む日本では電動車いすの普及が進みつつありますが,歩行者密度が高い都市の雑踏のスムーズな移動は容易ではありません.本研究では,人間行動学の歩行モデルと制御工学の最適制御理論を融合した実時間最尤推定とモデル予測制御により,都市部の群集流動に適合した電動車いすの自動運転の実現に挑みます.本研究は,都市部の高密度空間における電動車いすの移動の現実解を目指すもので,人と電動車いすのITSの実現に寄与すると考えています.
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研究実績の概要 |
電動車いすが群集流動に適応してスムーズに移動するために必要な,(1)群集流動のLiDARによる実時間計測アルゴリズムと(2)自動運転の制御則,およびその基礎技術となる(3)自己位置推定アルゴリズムの研究に取り組み,下記の実績を挙げることが出来ました. まず(1)の群集流動のLiDARによる実時間計測アルゴリズムでは,LiDAR点群を用いてJPDAFとk-means法により近接する複数歩行者を追跡する手法(Adachiら,SICE2023)を開発し,車載LiDARに実装(足立ら, 自動制御連合講演会2023), さらに電動車いすの障害物回避制御に適用しました(足立ら,MSCS2024).一方でLiDARの点群は対象物表面に現れるため歩行者の中心位置とのずれが生じ,歩行者に近接している場合は無視できない誤差となります.そこで点群データから位置及び形状を推定する手法(Naritaら,SII2024)と,楕円モデルにMLESACを適用する手法(Haziqら,MSCS2024)により歩行者の位置だけでなく正確な姿勢角度も推定するアルゴリズムを開発しました. 次に(2)の自動運転の制御則では,混雑環境における衝突回避をFuzzy Potentialの評価指標に基づく回避制御 (Kawaguchiら,IFAC-WC2023)と近接時での速度抑制(川口ら,自動制御連合講演会2023)を提案しました.さらにLiDAR点群から簡易的に推定した人流に沿った電動車いすの制御(工藤ら,同)と群集の分布に応じた目標軌道の設計(川口ら,同)を提案しました. そして(3)の自己位置推定では,混雑環境で環境点群が疎になる場合を想定した自己位置推定手法(成田ら,SICE2023)を提案しました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の目標として,(a)相対速度期待値に基づくモデル予測制御の拡張,(b)電動車いすの自律化と混雑環境に対応した制御システム構築,(c)計測データに基づく群集流動のモデル化,を挙げました. (a)では,2022年度に開発した相対速度期待値に基づくモデル予測制御則について,複雑な群衆流動での障害物回避に対応できるように2次元へ拡張した上でモンテカルロ最適化計算を導入し,Fuzzy Potentialに基づく手法と多峰性に対応したサンプルベースの制御手法へと改良することができました.さらに(b)では,車載LiDARによる自己位置推定・障害物追跡・群集流動の推定プログラムを実装したシステムを構築しました.そして(c)では,歩行者のLiDAR計測データを用いてカルマンフィルタにより実時間で定常的な群集流動を推定することが出来ました.これらの手法はROSとGazebo環境上に再現したSocial Force Modelによる群集流動のシミュレーション及び,屋内の歩行者に囲まれた環境での実験で,群集流動に適応した電動車いすの自動運転として有効性を確認することができました.その成果の一部は国際会議(AIM2024)で発表予定です.また,個々の歩行者との衝突を回避するために位置・姿勢だけでなくサイズの高精度な推定手法も開発し,別の国際会議(ECC2024)で発表予定です.さらに混雑環境中でも頑強に自己位置推定ができるプログラムも実装しています.また,電動車いすと小集団が交差した場合の歩行者の回避軌道を計測し,交差角度や相対速度に対する定量的な計測データも得ており,発表の準備を進めるとともに,制御則にそれらの実験パラメータを取り込める段階にあります.このように,2023年度の目標とした群集流動に適応した電動車いすの自動運転システムの開発と制御則の構築を着実に進められたことから,全体としておおむね順調に進められていると判断しました.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は主に,(1)群集流動の地面ベクトル場の推定則の高度化,(2)群集流動モデルを用いた制御則の改良,(3)フィールド実験による有効性の検証に取組みます. (1)では,2023年度に構築した群集流動の地面ベクトル場の推定則について,計算速度の向上に取り組むのとともに,複雑な群集流動を扱えるように,確率分布による不確定性の表現に取組みます.(2)では,既に構築した制御則がさまざまな群集流動に適応できるように,使用しているモデル予測制御の評価関数を改良します.さらに,歩行者挙動の実験データを直接反映した制御則のパラメータ設計に取り組みます.そして(3)では,大学のキャンパスで歩行者流を対象とした実験に取り組み,実験データの評価に基づいた手法の改良を継続し,高密度空間でのスムーズな電動車いすの自動運転の実現を目指します.得られたそれらの結果は,論文として発表を予定しています.
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