研究課題/領域番号 |
22K19830
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分62:応用情報学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阿久津 達也 京都大学, 化学研究所, 教授 (90261859)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 生体ネットワーク / 定常状態制御 / 多層ネットワーク / 遺伝子ネットワーク / ブーリアンネットワーク / 最小支配集合 / 編集距離 |
研究開始時の研究の概要 |
複数の生体ネットワークの同時解析・制御のための理論・技術を確立することを目的に研究を進める。ネットワークのモデルとしては、遺伝子ネットワークの離散数理モデルやその拡張、および、線形モデルや区分線形モデルを主対象に研究を行う。まずは、複数ネットワークに共通の定常状態を検出する計算手法を開発するとともに、その分布の理論解析を行う。次に、少数の遺伝子のみの観測により複数ネットワークの定常状態を判別する計算手法、および、複数ネットワークを目的の定常状態に導くための制御頂点の選択手法を開発する。そして、実際の生体ネットワークデータを対象にバイオマーカー、治療の標的遺伝子などの検出を試みる。
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研究実績の概要 |
研究代表者らは以前よりグラフ理論における最小支配集合という概念を用いた複雑ネットワークの制御モデルの解析や拡張について研究していた。そして、このモデルにおいては最小支配集合に現れる頂点を制御頂点として選択することによりネットワーク全体を制御可能であることを示していた。しかし、最小支配集合は多数存在する場合もあり一意に決まるとは限らず、用いる計算手法やツールにより得られる解が異なってしまうという問題点があった。そこで、各頂点の重要度を最小支配集合に出現する頻度として定義することにより、この問題点に対処することにした。ただし、最小支配集合自体の計算が困難であることが知られているため、その頻度を計算することはより困難である。そこで、その頻度を近似的に計算する手法を新規に開発した。開発した手法を、シグナル伝達ネットワーク、サイトカインなどに関する細胞間ネットワーク、および線虫の神経ネットワークの解析に適用した。その結果、提案した指標(重要度)が高い頂点に対応するタンパク質などは生物学的にも重要な役割を果たすものが多いことがわかり、提案した指標、および、計算法の有用性を示すことができた。 一方、線形制御理論に基づく複雑ネットワークの制御頂点同定手法が他研究者らにより研究されていた。その研究の一つに、ネットワーク全体を制御対象とするのではなく一部の頂点のみを制御対象とし、ネットワークフロー・アルゴリズムを適用することにより、制御頂点を同定するというものがあった。本研究ではその設定における、より単純な同定手法を開発し、その手法を線虫の神経ネットワークなどの解析に適用し、有用性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複雑ネットワークの頂点の重要度の新規な指標を提案し、その有効性を示すことができ、また、制御対象を限定した場合の制御頂点選択に関して既存手法よりはるかに単純な計算手法を開発するなど、新規で有用な成果を得ることができた。しかし、複数ネットワークの制御という観点からは、様々な検討は行っているものの論文などの具体的な成果を出すには至らなかった。よって、当初の予定とは少し違った方向での成果を得たということで、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
複数ネットワークの制御や解析について今年度は十分な成果を得ることができなかったので、来年度はより重点をおいて研究を行う。また、ブーリアンネットワークについては可観測性などについて新たなアイデアに基づく研究を開始したので、来年度中に成果としてまとまるよう尽力する。
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