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海の暗い所で珪藻が栄養塩を消費する事実-生存戦略の仮説を提唱-

研究課題

研究課題/領域番号 22K19838
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分63:環境解析評価およびその関連分野
研究機関北海道大学

研究代表者

大木 淳之  北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (70450252)

研究分担者 野坂 裕一  東海大学, 生物学部, 講師 (40803408)
亀山 宗彦  北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70510543)
野村 大樹  北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (70550739)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワード植物プランクトン / 大増殖 / 栄養塩 / 浮力 / 基礎生産 / ブルーム / 暗所
研究開始時の研究の概要

冷水沿岸性珪藻を実験室で培養する。培地中の栄養塩が枯渇したことろで、栄養塩を再添加、暗所に置く。暗所で栄養塩を吸収した後、珪藻細胞が放出する酸性多糖類(粘性物質)とDMSP(浸透圧調整物質)の量を測定する。栄養塩吸収の有無により、珪藻が浮力を得る可能性を調べる。
北海道噴火湾にて、珪藻ブルーム時に有光層(表面付近)と無光層(水深60 m)でプランクトンネットを水平曳きする。得られた珪藻細胞の栄養状態を調べ、酸性多糖類の量、DMSPの保持量を調べる。栄養不足に陥っている細胞に栄養塩を添加して、酸性多糖類やDMSPの量の変化を調べる。
培養実験と観測結果を比較して、珪藻の浮力獲得を明らかにする。

研究実績の概要

有光層で栄養不足に陥った珪藻が無光層に沈降、その珪藻が無光層で栄養塩を吸収したあとに有光層へ浮上できれば、再び活発に光合成ができる(仮説提唱)。珪藻が再浮上するためのメカニズムを観測と室内実験から明らかにすることを目的としている。
珪藻のタラシオシラ・ノルデンスキオルディをf/2培地で培養して、培地中の栄養塩を枯渇させた後、栄養塩を再添加して暗所に移動させた。R5年度は、暗所へ移すタイミングを最適化させるための光条件、培養時間などを調整した。培養条件によっては、硝酸態窒素が余り、ケイ酸が枯渇する状況になってしまった。この状況は、光条件を良くして窒素の吸収を早めることで解決することができた。
酸性多糖の粘性物質の計測について、当初計画では透明細胞外重合粒子(TEP)をアルシアンブルー染色による比色分析を計画していた。しかし、TEP計測の従来法では、フィルター上に乗ったTEP量により、TEPに付着アルシアンブルーの量が大きく変動する問題があることがわかった。これはTEP計測における根本的な問題と考え、TEP計測を断念することにした。その代わりに、植物プランクトン由来の酸性多糖を抽出・濃縮したうえで、発色試薬を添加して総ウロン酸濃度を比色分析する方針に転換することとした。試料海水にカルシウムイオンを投入して、酸性多糖をゲル化して沈殿させる。沈殿物を遠心分離で回収、エタノールで色素や脂質を除去したのちアセトン脱水、沈殿物を再溶解、比色分析する方法を確立した。室内培養実験と並行して、北海道噴火湾における海洋観測を実施、植物プランクトンの大増殖が起こる3月にプランクトンネットで珪藻懸濁物を採取した。今後、懸濁物中の酸性多糖(ウロン酸総量)を測定し、表面付近、底層付近の珪藻がもつ粘性物質の多少を比較する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

珪藻タラシオシラ・ノルデンスキオルディの培地で栄養塩を枯渇した後、暗所培養まで行うことができたこと、TEP計測を抜本的に見直して総ウロン酸量を比色分析する方法を開発することができた点は順調に進めることができている。栄養塩を再添加した珪藻培地中のウロン酸総量を測定するところには至っていないため、やや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

暗所培養を経た珪藻タラシオシラ培養の培地から酸性多糖の粘性物質を抽出してウロン酸総量を測定、培養段階により粘性物質の量(ウロン酸総量)が変化する様子を捉える。珪藻細胞を円筒容器に静置して、沈降速度を計測する。同時に、沈降速度別に珪藻細胞を分別する。粘性物質の多少により沈降速度が変化する可能性を調べる。また、沈降速度別に集めた珪藻細胞がもつ、DMSP(細胞の浸透圧を調整する硫黄化合物)の量を調べる。浮力調整にDMSPが使われる可能性についても調べる。海洋観測により、表層(明所)と中層以深(暗所)にいる珪藻懸濁物を集め、その懸濁物の沈降速度を計測、ウロン酸総量やDMSP量を測定、室内実験の結果と比較する。栄養不足に陥った珪藻が暗所で栄養塩を吸収した後、粘性物質(酸性多糖)を身にまとうこと、浸透圧調整物質のDMSPを放出することで、浮力を得て表層へ再浮上、光合成を再開する仮説を実証する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Significant nutrient consumption in the dark subsurface layer during a diatom bloom: a case study on Funka Bay, Hokkaido, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Umezawa Sachi、Tozawa Manami、Nosaka Yuichi、Nomura Daiki、Onishi Hiroji、Abe Hiroto、Takatsu Tetsuya、Ooki Atsushi
    • 雑誌名

      Biogeosciences

      巻: 20 号: 2 ページ: 421-438

    • DOI

      10.5194/bg-20-421-2023

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Seasonal changes in taxonomic, size composition, and Normalised Biomass Size Spectra (NBSS) of mesozooplankton communities in the Funka Bay, southwestern Hokkaido: Insights from ZooScan analysis2022

    • 著者名/発表者名
      Teraoka Takumi、Amei Kanako、Fukai Yutaka、Matsuno Kohei、Onishi Hiroji、Ooki Atsushi、Takatsu Tetsuya、Yamaguchi Atsushi
    • 雑誌名

      Plankton and Benthos Research

      巻: 17 号: 4 ページ: 369-382

    • DOI

      10.3800/pbr.17.369

    • ISSN
      1880-8247, 1882-627X
    • 年月日
      2022-11-30
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Marine sediment as a likely source of methyl and ethyl iodides in subpolar and polar seas2022

    • 著者名/発表者名
      Ooki Atsushi、Minamikawa Keita、Meng Fanxing、Miyashita Naoya、Hirawake Toru、Ueno Hiromichi、Nosaka Yuichi、Takatsu Tetsuya
    • 雑誌名

      Communications Earth & Environment

      巻: 3 号: 1 ページ: 1-7

    • DOI

      10.1038/s43247-022-00513-7

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Atmosphere-sea ice-ocean interaction study in Saroma-ko Lagoon, Hokkaido, Japan 2021(北海道サロマ湖における大気–海氷–海洋相互作用研究について)2022

    • 著者名/発表者名
      Nomura, D., P. Wongpan, T. Toyota, T. Tanikawa, Y. Kawaguchi, T. Ono, T. Ishino, M. Tozawa, T. P. Tamura, I. S. Yabe, E. Y. Son, F. Vivier, A. Lourenco, M. Lebrun, Y. Nosaka, T. Hirawake, A. OOKI, S. Aoki, B. Else, F. Fripiat, J. Inoue, and M. Vancoppenolle
    • 雑誌名

      氷河情報センター

      巻: 40 号: 0 ページ: 1-17

    • DOI

      10.5331/bgr.21R02

    • ISSN
      1345-3807, 1884-8044
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 南北インド洋における 有機臭素ガスとCFC-11 イソプレンの測定2022

    • 著者名/発表者名
      大木淳之
    • 学会等名
      日本地球化学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-07-05   更新日: 2024-12-25  

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