研究課題
挑戦的研究(萌芽)
超小型衛星を用いて、電波の伝搬特性を活かしたリモートセンシングによる地球磁気圏の電磁環境モニタの道を拓く。そのため、(A) 衛星内部から混入する人工雑音を衛星上の実時間演算で抑圧する技術(B) 雷起源電波を検知し、到来方向や伝搬遅延特性を表すパラメータを実時間演算する技術を開発し、超小型衛星に搭載可能な小型・軽量なディジタル受信器の基礎設計を行う。
太陽系内プラズマの電磁環境を網羅的に調査するには、小型化した衛星を複数配置した同時多点観測が必須である。超小型衛星による電磁波計測を実現するには、搭載受信器の超小型化と受信した電磁波信号を超高速(準リアルタイム)で機上処理し、必要な情報のみを地上伝送する機能の実現が求められる。本研究計画では、プログラマブル論理チップ(FPGA)を用いて受信器を大幅に小型・軽量化し、(A) 衛星内から発生する搭載機器由来の雑音を除去する機能と (B) 観測データの連続実時間処理を行う信号処理モジュールを開発する。さらに雷起源の電磁波である雷ホイスラーなどの波動現象を検知・抽出し、波動の到来方向や分散値などの伝搬パラメータを実時間演算する機能を開発することで、超小型衛星に搭載可能な超小型・軽量な雷ホイスラー検出受信器を開発する。初年度は、FPGAによる定常的な人工雑音除去機能について論理実装を行った。雑音推定には、雑音レベルが変化しても適応的に対応できる逐次推定機能を開発し、受信信号から雑音を差し引くことで混入した雑音レベルの低減を実現している。これまでに、シミュレータレベルで良好な雑音除去特性が得られることを確認できており、今後、実機での動作確認を進める。並行して、受信信号中に観測された自然波動信号を検知する、波動イベント検出機能の検討を行った。同機能の開発には、異常検知アルゴリズムを採用し、計算サーバ上でその動作検証を行った。その結果、波動現象の検知が原理的に可能であることを確認した。ただし、現行の処理方式は、機上での実時間動作には計算量が過大であるため、今後、計算負荷の軽減を検討する。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた雑音除去機能のFPGAロジックの検討はほぼ予定通り進行し、シミュレータを用いた動作検証で、良好な特性を得ることができた。また波動イベントの検知機能についても、アルゴリズムの有効性が確認でき、今後、計算負荷の軽量化とモジュール化を進める計画である。
雑音除去とイベント検知の両機能は相補的な関係にあり、高い雑音除去性能が得られれば、イベント検知の特性改良につながる。両機能の実装・改良に加え、後段で波動の到来方向推定機能を組み合わせることで、検知した波動イベントの到来方向や分散値の算出に必要な伝搬パラメータを演算する機能を開発する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件)
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