研究課題/領域番号 |
22K19889
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉澤 晋 東北大学, 工学研究科, 教授 (30455802)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | キャビテーション / 強力集束超音波 / Histotripsy / がん治療 |
研究開始時の研究の概要 |
治療において,低侵襲化による患者負担低減が重要な要素の1つである.そのような治療法の1つとして,強力集束超音波(HIFU)照射によって発生させたクラウドキャビテーションを用い,軟部組織を機械的に破砕する非侵襲治療法がある.これはHistotripsyと呼ばれる.本研究では,最初に発生させた気泡群を起点とし,HIFU焦点の電子走査により連続的に気泡群を生成する手法を開発する.これにより,低いエネルギーと高いスループットを両立する新治療法を確立する.本研究の成果により,様々な疾患に対する組織破砕治療を実用的なものとし,免疫治療などの他の治療とのコンビネーション治療への道を拓く.
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研究実績の概要 |
非侵襲ながん治療法として最近注目されているものに,強力集束超音波(HIFU)のパルス波を用いた組織破砕治療があり,Histotripsyと呼ばれている.2023年には肝腫瘍治療用の機器の販売がFDAから承認された.この手法は単なる組織破砕効果だけでなく,最近では免疫賦活効果も注目されている.Histotripsyでは,非常に強力なHIFUパルス波を集束させ,HIFU焦点において減圧沸騰現象による気泡群(クラウドキャビテーション)が発生させ,この気泡群の崩壊によるエロージョンを繰り返すことで周囲組織を破砕する.そこで本研究では,低いエネルギーと高いスループットを両立する新治療法の開発を目的とし,2023年度は,2022年度に開発した4点の焦点に連続的にクラウドキャビテーションを発生させるHIFU照射方法を用いて,組織破砕効率ついて実験的に検討を行った. HIFU照射方法としては,最初の焦点でクラウドキャビテーションを発生させた直後に1 mm手前側(HIFUトランスデューサ側)に焦点をシフトし,キャビテーション気泡群を手前側に1 mm分成長させた.1 mmの焦点シフトを続けて2回行い,4つの焦点にまたがってキャビテーション気泡群を生成した.このHIFU照射シーケンスを用いて鳥肝臓に対して繰り返しHIFU照射を行い,組織の破砕実験を実施した.組織の破砕量は超音波イメージングの輝度減少量として評価した.その結果,焦点の電子走査によるキャビテーション気泡群の連続的生成は,鳥肝臓の組織破砕速度向上に有効であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,生体組織に対するHIFU照射実験を行い,2022年度に開発したHIFU照射方法を用いて,キャビテーション気泡群の連続的生成による生体組織破砕速度向上効果について実験的に検討を行った.鳥の筋肉組織と肝臓を照射対象として,様々なパラメータで実験を実施した結果と他の研究・開発結果を参照し,最終的に鳥肝臓組織を照射対象とすることと決めた.最初は,商用の超音波診断装置を用いて超音波画像の輝度減少量について評価したが,輝度減少量の定量性の観点から,開発用の超音波送受信プラットフォーム(Verasonics,Vantage 256)を用いて得られた超音波輝度信号について解析することとした.結果として,鳥肝臓を対象としたときの,キャビテーション気泡群の連続生成による破砕速度向上を示すことができ,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2024年度は,様々なHIFUシーケンスを用いたHIFU照射実験を実施し,低いエネルギーと高いスループットを両立する,より効率の良い新治療法を開発する.なお,対象組織を鳥肝臓としたため,十分な組織厚さを確保した条件で組織中のキャビテーション気泡を光学的に観察する方法は困難であり,組織内のキャビテーション気泡イメージング手法としては超音波イメージングを用いる.組織破砕量も超音波イメージングで評価するため,HIFUパルス照射中の気泡イメージングと,組織イメージングを適切な組み合わせて実施し,気泡領域と組織破砕領域の関係性について調べる.また,HIFUパルス照射後に溶解まで時間のかかる残存気泡が次のHIFUパルスを散乱し,効率低下につながることがわかっている.そのため,残存気泡の影響を低減するか,可能であれば残存気泡を活用できるHIFU照射方法も検討することで,さらなる破砕速度の向上を目指す.
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