研究課題/領域番号 |
22K19891
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
甲田 優太 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90759325)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 高分子自己組織化薬 / アミノ酸 / 酸化ストレス / 活性酸素種 / 薬物送達システム / 肝疾患 / 敗血症 / 感染症 / 薬物送達 / 炎症 / システイン |
研究開始時の研究の概要 |
EPR効果では、腫瘍組織内の粗雑な血管壁を利用して会合体を集積させるため、がん以外の全身性疾患ではEPR効果を利用できない。よって、がん以外の疾患では低分子薬を中心に新奇分子を探索せざるを得ない。低分子薬は患部組織に送達する薬物量を制御できないため、新奇分子の真の薬理活性を評価することが困難である。本研究では、新奇分子の真の薬理活性を明らかにする薬物送達を創出するための高分子材料を開発し、酵素などの生体環境下で生分解して薬物を徐放するシステムを構築する。非アルコール性脂肪肝炎と認知症を治療に挑み、分子レベルでの相互影響を明らかにし、全身性疾患治療の実現への足掛かりを掴む。
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研究実績の概要 |
2年目である昨年度は、初年度に合成したポリエチレングリコール(PEG)とポリシステインのブロック共重合体で構成されるシステイン基盤型高分子自己組織化薬(NanoCys)を敗血症モデルと非アルコール性脂肪肝炎モデルを用いて、その治療効果を検証した。 (1)敗血症モデル NanoCysの最大の特徴は、腸内などの内在性酵素により生分解されてシステインを徐放し、全身のシステイン濃度を一定に維持することでシステインの薬理活性を惹起する。故に、NanoCysを腸内に送達することが重要であり、従来の薬物送達システムとは異なり、高分子ミセル自体は必ずしも患部に直接送達される必要がない。全身性疾患である敗血症は、必ずしも病理機構が明らかになっているわけではなく、明確な対象臓器も明らかになっていない。そこで、NanoCysシステムによるシステインの全身濃度制御を実現する薬物送達が有効に機能するのではないかと考え、実験を行った。 BALB/cマウスに2日間NanoCys水溶液を自由摂水投与した後、リポ多糖(LPS)を腹腔内投与し、敗血症性ショックモデルを作製した。その結果、無治療群や低分子システイン投与群と比較して、致死率が50%に達するまでの時間を5-6時間延長することを実現した。 (2)非アルコール性脂肪肝炎モデル 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝硬変や肝臓がんへと進行する重篤な疾患であるが、有効な治療薬はほとんどない。そこで、C57BL/6Jマウスに7日間、コリン欠乏メチオニン減量高脂肪食(CDAHFD)を与え、CDAHFD給餌の前日からNanoCys水溶液を自由摂水投与した。その結果、低分子システイン投与群では全く効果が見られなかったのに対し、NanoCys投与群では有意に脂肪蓄積抑制効果が見られただけでなく、細胞膜脂質とタンパク質酸化も有意に抑制されていたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に新たに開発し、安全性を確認したNanoCysを用いて自身の仮説通りの薬理活性を発現するかを敗血症性ショックモデルと非アルコール性脂肪肝炎モデルを用いて検証した。その結果、明確なターゲット患部が不明な敗血症性ショックモデルで寿命延長効果を実現しただけでなく、非アルコール性脂肪肝炎モデルにおいても、低分子システインよりも有意な治療効果を得ることができた。これは、本研究で開発しているNanoCysによる薬物送達は、特定の疾患に留まらず、急性から慢性疾患まで幅広い疾患に適用可能であるだけでなく、敗血症のような全身性疾患の治療にも有効であることを示唆する結果である。引き続き来年度は、非アルコール性脂肪肝炎モデルにおけるNanoCysの作用機序とNanoCysを経口投与した場合のシステインの体内動態を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
非アルコール性脂肪肝炎におけるNanoCysの作用機序解明を進める。さらに、NanoCysによるシステインの動態を明らかにし、本研究目的の実現を目指す。
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