研究課題/領域番号 |
22K19893
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 健太郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (20242315)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 音響周波数特性 / 固有モード / 共振周波数 / 人の検知 / 姿勢検出 / 車室内 / 浴室 / 見守り |
研究開始時の研究の概要 |
人の見守り技術のひとつとして,トイレや浴室などの個室,居室での人の在・不在,立位・仰臥位などの状態を部屋の音響特性(響き方)から知る方法を確立する。部屋はその寸法・形状に固有の音響特性をもち,人の存在などによってその特徴が変化するので,1組のスピーカとマイクロホンによってその特徴をとらえて人の有無や姿勢を判定する手法を開発する。画像に比べてプライバシーの問題が少ない見守り技術になり得ると思われる。
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研究実績の概要 |
本研究は,浴室やトイレ、車室など個室での人の見守りをプライバシーの問題の少ない室内音響特性によって実現しようとするものであり、主に部屋の音響共振モードとその変化に着目する手法を提案している。 一般的な家庭用ユニット・バスの1/1スケール模型を製作し、スピーカとマイクロホンを1つずつ設置し、スイープ音によって部屋の周波数特性を取得する実験を行った。周波数範囲は使用したスピーカの特性から100 Hz~5 kHz程度とし、受信音の振幅特性のみに着目した。1/1模型内に人がいる場合といない場合の周波数特性の差から人の有無を判定できることが確かめられた。この際に、人のいる場合といない場合の振幅周波数特性をそれぞれ数値列と考え、それらの規格化した内積の値を評価指標とした。さらにしきい値を適切に選択することで、立位なのか仰臥位なのかの判定も可能であることがわかった。 また、1/4スケールモデルでは、床面に加熱用のニクロム線を設置して温度を変化させた実験を行い、温度変化による音速補正の方法を検討した。また、提案手法により、温度そのものの測定や温度分布の有無の判定の可能性を示すことができた。 次に、対象を小型車の車内として、スピーカとマイクロホンを1つずつ用いて周波数特性を取得する実験を行った。車内に人がいる場合といない場合を前述の実験と同様の評価指標によって判定することができた。また、着座位置が異なる場合、1名乗車と2名乗車の違いなども評価指標のしきい値の適切な設定によって周波数特性から区別することができることが確かめられた。また、窓の開閉の判定もできることがわかった。 以上の2つの実験から、浴室や車室内のような比較的狭い個室内で、音響周波数特性のみによって人の有無などを検出するという基本的アイディアの有効性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1/4スケールの浴室模型と人形による実験に加え、1/1スケールの浴室モデルと実際の人による実験を早期に実施でき、人の有無のみならず、人の姿勢までも検出できるめどが得られたことから、当初の計画以上に研究が進んだと考えられる。 また、浴室に加えて、小型自動車を対象とした実験も実施し、同じ提案手法がそのまま適用可能であることを示すことができた。これも当初計画を越えた成果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
提案手法が浴室や小型車の車室内に適用できることが初年度の実験によって確かめられたので、2年目は判定の評価指標を再検討して判定精度を高めたい。具体的には、測定周波数帯をいくつかに分けて、変化の顕著な周波数帯を有効に使うことで評価指標の感度を向上させることを試みる。また、振幅特性に加えて位相特性を利用することを検討する。理論から予想されるように位相は共振周波数の前後で大きく変化することをすでに実験で確認しており、振幅と位相の両方の有効な利用方法を検討する。 また、浴室においては、浴槽の水の有無や窓の開閉の影響を検討すると同時に、人が倒れているかどうかの判定ができるようにする。また、そのために周波数特性の時間変化に着目することも検討する。さらにスイープ音ではなく、雑音や環境音を利用する可能性についても検討する。 一方、車室内への応用では、着座しておらず倒れている場合などについても実験を行い、車室内に取り残された人の検出を行うことを目指す。また、人形などを利用して、幼児でも検出できるかどうかなどを検討する。 以上のことについては、実験と並行して音響数値シミュレーションを行い、適切な周波数の選択に役立てると同時に、その物理的意味を理解したいと考えている。
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