研究課題/領域番号 |
22K19894
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大槻 主税 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00243048)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 生体材料 / 人工骨 / リン酸エステル / 生体応答性材料 / 擬似体液 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代の人工骨用素材には、体内で材料周囲の環境の変動に応じて、薬剤徐放や自己修復といった生体応答性を示す機能が求められている。本研究課題では、生体応答性材料の設計概念の確立を目指して、リン酸エステルのチタン(Ti)化合物やジルコニウム(Zr)化合物を利用して、酵素の存在に対する応答性を調べる。酵素としてアルカリフォスフォターゼ(ALP)の存在を対象として、その存在に応答した材料の溶解やヒドロキシアパタイト(HAp)の析出現象が起こる条件を生体外(in vitro)試験で調べる。さらに、チタンやジルコニアの基板表面にリン酸エステル化合物をコーティングする技術を開発する。
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研究実績の概要 |
人工骨は、機能不全となった骨を修復するための医療機器であり、超高齢社会の医療を支えるために、さらなる高機能化が求められている。これまで人工骨の素材としてリン酸カルシウム系セラミックスがあり、骨と結合する性質(骨結合性)を発現する生体活性材料として知られている。しかし、生体内の環境に応答する人工骨用素材は未開拓である。本研究課題では、次世代の人工骨用バイオマテリアルとして「生体応答性材料」の概念を用いて、従来生体不活性材料として利用されてきたチタン系金属やジルコニアを適用し、新たな人工骨用素材の開拓を目的にする。酵素としてアルカリフォスフォターゼ(ALP)を対象にし、その存在に対する応答性を、ヒトの血漿を模倣した擬似体液(SBF)を用いた生体外(in vitro)試験で調べる。さらに、チタン系やジルコニアの基板表面にリン酸エステル化合物をコーティングする技術の開発も目指す。 2022年度は、チタン系材料の表面を過酸化水素水とリン酸を含む溶液で直接にリン酸チタン系の化合物を作製する方法、ならびにジルコニア表面を液相中でのレーザー処理によりリン酸ジルコニウム系化合物を形成させる条件を探索した。適切な条件を選択することで、リン酸チタンがチタン金属板上に、リン酸ジルコニウム基板上にリン酸ジルコニウムを形成させることに成功した。一方で、層状構造を持つリン酸化合物の層間を有機修飾する技術を探索するとともに、その層間にコバルトイオンなどの生体微量元素の導入も行った。これら術をさらに拡大することで酵素に応答するリン酸エステルの導入条件を調べていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リン酸チタンやリン酸ジルコニウムを基板上に合成することに成功している。ただし有機修飾を効率よく行うために層状化合物の形成を検討していたが、その点は未解決で課題として残っている。一方で層状化合物で有機修飾したリン酸ジルコニウムであれば、その層間を有機修飾し、徐々に生体環境で分解することを明らかにしているので、この性質を利用すればリン酸エステルを導入することによって、酵素応答性をもつリン酸ジルコニウムが創生可能であり、またその技術をチタン金属へと展開できると期待される。これらの応答性をもつ材料を細胞培養試験により評価する予定であるが、まだ知見の収集が十分とは言えず、さらに、種々の細胞培養の実験を拡大する必要がある。それらにより、所期の目的達成が達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
層状リン酸チタンや、層状リン酸ジルコニウムを合成するには、これまでの反応条件よりもより温和な条件が必要になると推察される。その条件でかつ有機分子との反応が起こる条件を探し出すことで酵素応答性分子を導入したチタン系材料、ジルコニア系材料が得られる。さらに、細胞培養の実験等で細胞への刺激性を含めた応答性について、進める。これらの実験を数多くの繰り返すことで知見を積み重ねる。
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