研究課題/領域番号 |
22K19909
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 理貴 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (00549529)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | アプタマー / DDS / 脳 / インスリンン受容体 / RNAアプタマー / 量子ドット |
研究開始時の研究の概要 |
神経疾患に対する医薬開発が停滞している要因として、治療分子に比べ脳薬剤送達技術(DDS)の開発研究が進んでいない事があげられる。本研究では、この課題の克服に挑戦するため、これまでに実績のある抗体やペプチドを用いた脳DDS戦略の有効性の最大化とリスク(副作用)の最小化を、核酸抗体「RNAアプタマー」によるモダリティ変革によって実現を目指す。次世代蛍光分子・量子ドットの活用による視覚化、実際に核酸医薬を送達分子として用いる有効性評価によって新規脳DDS戦略の構築に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳薬剤送達(脳DDS)分子・技術の確立を実現するアプタマー分子の創製と蛍光分子によるその視覚的評価法の確立を目的とする。初年度は、受容体介在性の経細胞輸送(RMT)を利用した脳へのDDS戦略実現の有力標的であるトランスフェリン受容体(TfR)やインスリン受容体(IR)を対象として、独自の手法で特異性と親和性が高いアプタマー分子の同定と分子サイズの最適化(短鎖化)に取り組んだ。その結果、両受容体に対して特異的に結合する分子の同定に成功し、結合力を維持した状態で最適化(短鎖化)することができた。また、各受容体とその内在性リガンドとの結合への影響をSPR解析法にて調べた結果、IRに対するアプタマーは内在性リガンドの受容体結合に干渉しない、つまり個体の生理機能に影響しない分子であることが示唆された。このことから、今後この抗IRアプタマーを脳DDS分子として用いることとした。次いで、従来の蛍光標識法を利用してin vivoイメージングがどの程度可能か判断するため、汎用される蛍光分子(Alexa670)を抗IRアプタマーの末端に標識しヌードマウスに投与(10 mg/kg b.w., i.p.)した。投与3時間後、分子の局在をIVISイメージング装置にてマウス全身の蛍光画像で確認した結果、腹腔内臓器における蛍光が観察されたが、頭部(脳)での蛍光は検出できなかった。各種臓器を摘出後、同装置で蛍光を観察したところ、腹腔内臓器に加え、脳組織においても蛍光を観察することができた。これらの結果から、創製分子が脳へ送達されている可能性が十分にあり、また通常の蛍光標識では当該分子の脳への送達をin vivoイメージングで捉えることは難しいことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに進捗した。本研究の根幹となる、RMTの有力標的であるIRに対して強く結合する分子を取得できている。更に、実用化には欠かせない小型化(短鎖化)にも成功した。また内在性リガンドの結合(生理機能)に影響しないことを確認することができていることから概ね計画に沿って進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は概ね計画に沿って研究が進捗した。本研究の根幹となる、RMTの有力標的であるIRに対して強く結合し、小型化(短鎖化)が可能であり、なおかつ内在性リガンドの結合(生理機能)に影響しない分子を創製することができた。今後は、当該アプタマーを用いて、汎用的な蛍光分子(Alexa670)を標識することで得られた知見と比較しながら、本研究の目的となる量子ドット標識によるin vivoイメージングの可否を評価する。具体的には、Alexa蛍光標識時の実験と同様に、ヌードマウスに投与(10 mg/kg b.w., i.p.)し、3時間後にIVISイメージング装置で観察する。In vivoイメージングの後、各組織を採材し、摘出した組織における蛍光を同装置で確認する。またアプタマーそのものをPCRやELOSAでの検出を試みる。更に、別の角度から薬剤送達を確認するため、実際に薬剤として開発したTGF-beta1に対するアプタマーを上記アプタマーに連結した複合分子を作製し、投与する。脳組織中のSmad2のリン酸化などを指標とすることでDDS効果の評価を試みる。これらの実験を通して、開発した抗IRアプタマーがRMTを利用した脳DDS分子として機能すること、量子ドットによる蛍光標識が脳送達in vivoイメージングを行うための方法として有効か否かを評価し、また実際に薬剤と連結し脳へ送達できるか否かを検討する。
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