研究課題/領域番号 |
22K19944
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 葉子 (遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (30453806)
|
研究分担者 |
中南 秀将 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (20548515)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
|
キーワード | 超音波 / 肺 / 抗体修飾 / 好中球 / ナノバブル |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに、脂質ナノ粒子へ超音波造影ガスを封入した微小気泡(ナノバブル)を開発し、体外からの超音波照射と併用することで、非侵襲的に種々の組織の診断造影および遺伝子・核酸導入を可能とすることを示してきた。しかしながら肺組織は、内部の空気の存在により超音波が反射されやすく、超音波の適用が難しいとされている。本研究では、炎症時にみられる浸出液の存在により、疾患領域に限局して超音波到達性が向上し得ると考え、肺疾患におけるナノバブルと超音波併用システムの可能性を検証するとともに、疾患部位集積性や遺伝子・核酸搭載能などを有するナノバブルを開発し、肺疾患に特化した超音波診断・治療システムの基盤構築に繋げる。
|
研究実績の概要 |
これまでに超音波応答性ナノバブルを開発し、超音波照射との併用により、種々の組織への遺伝子・核酸デリバリーおよび超音波造影が可能となることを示してきた。肺組織は、内部の空気の存在により超音波が適用し難い組織とされてきたが、炎症時の滲出液の存在により、疾患部位のみ超音波の到達性が変化することが考えられる。そこで本研究では、肺炎症時の診断・治療におけるナノバブルと超音波併用システムの可能性を検証するとともに、炎症部位へ集積性を有する核酸搭載ナノバブルの開発も目指している。 肺炎症部位への超音波照射の検討を行うにあたり、炎症を伴う肺疾患の1つである肺線維症モデルマウス作成方法に関し検討を開始した。肺線維症を誘発するブレオマイシンの投与経路として気管内投与の報告が多く占めるが、近年では経鼻投与や口咽頭への投与などでも検討されている。手技として簡便で、安定に両肺に薬剤が投与可能な方法として口咽頭への投与による検討を試みた。予備検討で用いたエバンスブルーは両肺に到達可能であり、ブレオマイシン投与により肺組織重量の増加も認められた。肺への超音波照射実験までは至らなかったが、本研究を進めるうえで重要なモデルマウスに関する重要な知見が得られた。 また、炎症部位へ集積性を有するナノバブルの開発に向け、ナノバブルの基盤であるポリエチレングリコール修飾リポソームに対し、抗体修飾を施し、その物性評価、およびフローサイトメトリーを用いた炎症性細胞である好中球への相互作用性評価を行ったところ、抗体修飾に伴い好中球へ特異的に結合し得るリポソームが得られた。好中球標的ナノ粒子の報告は少ないことから、非常に有用な成果といえる。更なる詳細な解析とともに最適化を進め、本研究で目的とする超音波造影ガスを封入したナノバブルとしての特異性評価も行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺炎症部位への超音波照射実験に向け、モデルマウス作成法に関する検討を進めることができた。まだ実際の照射は行っていないものの、本研究の目的である肺への超音波照射の影響評価を進めるうえで重要な検討項目である。また炎症部位へ集積性を有するナノバブル開発に向け、抗体修飾リポソームの調製を進め、好中球へ特異性を有するリポソームが得られつつある。またモデルマウスを用いた実験前に行う予定の3次元培養肺組織の検討も着手しはじめたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の検討において、肺線維症モデルマウスの作成に着手した。次年度は、モデルマウスを用いた超音波照射条件の検討を進めていく予定である。モデルマウスの作製条件の最適化とともに、肺湿乾重量差による肺水腫の評価や、ヒドロキシプロリン定量からの線維化評価などを含めた疾患の進行状況の評価法などの検討も同時に進め、後に行う治療システムの評価法に繋げていく。モデルでの評価がうまく進行しない場合には、LPS(リポ多糖)投与による肺炎症モデルでの評価に切り替えることも検討する。また、それらモデルマウスへの超音波照射条件を検討するにあたり、滲出液が超音波の到達性に与える影響について、3次元培養肺組織を用い検討を行う。血管を模倣した領域に蛍光化合物とナノバブルを添加し、肺胞内部側の溶液の有無により、血管(体外)側から超音波を照射した際の各構成細胞への影響を蛍光顕微鏡、あるいはフローサイトメトリーにより評価する。さらに、好中球に相互作用性を有する抗体修飾リポソームのより詳細な解析を行い、他の免疫細胞への影響評価も行いながら、超音波造影ガスを封入した抗体修飾ナノバブルの調製、および好中球との相互作用性評価を試みる予定である。これらが順調に進んだ場合には、上述のモデルマウスへの投与による肺への集積性評価も進め、肺炎症部位への超音波照射技術と融合した肺疾患治療法開発への応用に繋げていく。
|