研究課題/領域番号 |
22K19952
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浜田 華練 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70964469)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 東方キリスト教 / キリスト教神学 / キリスト論 / シリア語 / アルメニア語 / アルメニア教会 / シリア正教会 / 非カルケドン派 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、シリア・アルメニア教会間の「キリストの肉体の不朽性」をめぐる議論を分析対象とする。6世紀のアンティオキアのセベロスとハリカルナッソスのユリアノスの論争以来、「キリストの肉体が腐敗しうるか」という問いについて、非カルケドン派の間で見解が分かれてきた。シリア正教会は、キリストの「復活後の」肉体は不朽であったとするセベロスの立場を正統とするのに対し、アルメニア教会は「復活後の」という留保なしでキリストの肉体の不朽性を教義として奉じる。本研究は、「キリストの肉体の不朽性」の教義のアルメニア教会における成立過程を明らかにするとともに、これをめぐるシリア・アルメニア間の論争の歴史的展開を追う。
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研究成果の概要 |
本研究課題では、非カルケドン派(合性論派)において6世紀以来問題とされてきた、「キリストの肉体の不朽性」をめぐって、アルメニア教会とシリア正教会の間で繰り広げられてきた議論を、時系列に沿って整理するとともに、主にアルメニア教会側で、キリストの肉体の不朽性に関する教義の成立・発展過程を分析した。その結果、アルメニア教会はシリア正教会側で異端とされたハリカルナッソスのユリアノスの見解を支持したという従来の定説とは異なり、6世紀のシリア教父マッブーグのフィロクセノスの論に依拠しながら、「キリストの肉体は、復活の前から不朽であった」という教義を発展させていったことを明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、ごく限られた時代のごく限られた地域に生きたキリスト教徒が「キリストの肉体が腐敗しうるかどうか」という問いに取り組んだ過程に光を当てたものである。現代を生きる我々の目には、無意味かつ非生産的な問いに見えるが、「人間となった神」たるキリストの「肉体」の在り方を徹底的に追求する姿勢の背景には、「肉体」を「人間を人間たらしめるもの」として定義し、そしてその肉体をもったまま神に近づかんとする意志が潜んでいる。人間はあくまで「肉体」をもって完成されるべきという強い願いは、技術の発達により人間が「肉体」を伴うことがもはや自明ではなくなりつつある現代社会においても重要な示唆を与えうる。
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