研究課題/領域番号 |
22K19954
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 東北学院大学 (2023) 東京大学 (2022) |
研究代表者 |
閔 東曄 東北学院大学, 教養教育センター, 助教 (10967433)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 日朝思想交流史 / 京都学派 / 朝鮮人留学生 / 崔鉉培 / 新カント学派 / 生の哲学 / 京都帝国大学哲学科 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、京都帝国大学哲学科で修学した朝鮮人留学生に注目し、朝鮮人留学生の留学背景、京都での生活環境、修学状況、学友や教授との関係、卒業後の行跡などを実証的に調査・分析したうえで、植民地期の朝鮮(および解放後の韓国)で活発な活動を行った京都帝大哲学科出身の朝鮮人知識人を取り上げ、彼らの思想活動を京都学派の思想との関連において捉え直す。これにより、近代日本の学知や思想を代表する京都学派をめぐる朝鮮人の人的・知的ネットワークの一端を解明し、帝国日本/植民地朝鮮および東アジアの思想交流史研究へと発展させる足がかりとしたい。
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研究実績の概要 |
本研究は京都帝国大学哲学科で学んだ朝鮮人留学生に注目し、彼らがどのような社会環境の中で近代的な知を身につけ、また、それがその後の思想活動にどう影響したのかについて考察することを目的とする。本年度は、まず、前年度に行った朝鮮人留学生の修学環境に関する資料調査を補完するための追加調査を行うとともに、前年度に実施できなかった韓国のソウルでの資料調査に加え、蔚山での資料調査を行い、朝鮮語学者・教育哲学者崔鉉培を中心に朝鮮人留学生が植民地期朝鮮、解放後韓国においてどのような活動を行ったのかについて実証的に把握することができた。また、崔鉉培が影響を受けていた西田幾多郎、朝永三十郎、小西重直などの京都学派の思想について、とくに新カント学派、生の哲学、人格主義、文化主義といった大正期日本の思想的潮流を表すキーワードに焦点をあて検討するとともに、植民地朝鮮で活動する崔鉉培のテクストにそれらがどのように屈折しながら反映されていたのかについて分析作業を行った。その研究成果は、10月8日に開催された朝鮮学会第74回大会、2月28日に開催された第2回福岡コリアン・スタディーズ(若手ワークショップ)において報告した。 本年度における資料収集・整理・分析を通じて、これまで民族主義的側面が注目されがちであった崔鉉培の思想活動について、日本留学を媒介にして西洋哲学を吸収したという新たなファクターを提示し多角的・立体的に捉えるとともに、非対称的な関係のもとで行われる近代日朝思想史の一端、植民地的近代などについて深く考察することができた。今後、学会発表時の議論を踏まえたうえで、これまでの分析結果をまとめ、論文執筆につなげていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前年度に実施できなかった韓国・ソウルでの資料調査に加え、蔚山(崔鉉培記念館)での資料調査を予定通りに実施することができた。また、前年度に実施できなかった京都大学大学文書館での資料調査を行うとともに、東京(国立国会図書館)などで追加・補完調査を実施し、朝鮮人留学生の修学環境の実態について、より深く理解することができた。また、予定通りに京都学派のテクストを収集し分析するとともに、崔鉉培などの朝鮮人留学生のテクストと比較検討を行い、京都学派との思想的連関について研究を進めることができた。また、研究成果については、鎌倉で行われた研究ワークショップ(1月12日)にて韓国の研究者たちと情報・意見交換を行い、論文執筆につなげるための多角的視点を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6(2024)年度は、日本国内において補足調査を行うとともに、主として研究成果を論文として発表することに努めたい。令和5年度の冬期は所属先の異動等で論文執筆に集中することができなかった。令和6年度は、これまで収集・整理した関連資料をもう一度綿密に検討し、先行研究と照らし合わせながら研究成果の妥当性を確認する。また、関連研究を行っている研究者と情報交換を行いつつ、論文として結実させたいと考えている。京都帝国大学哲学科出身の朝鮮人留学生の思想活動に関する研究は、これまであまり注目されてこなかった一国史を越える試みであり、文学や哲学、歴史学(社会史・思想史)などの関連研究の発展に貢献でき、ひいては東アジア近現代思想史研究の活性化につながると考えられる。
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