研究課題/領域番号 |
22K19956
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
|
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
坂口 英伸 東京藝術大学, 美術学部, 助手 (00646440)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | メタリコン / 溶射 / 表面処理 / 天賞堂 / 彫刻 / 朝倉文夫 / 渡辺長男 / 被膜 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は作品調査と資料調査の両輪で実施する。前者については、美術館や博物館などの諸施設を訪れて作品を実見することで実行する。また、現存しない作品については、関係資料に掲載された写真・図・解説などの情報を取得するように努める。後者については、図書館・資料館・文書館などで調査を行うことで遂行する。資料調査の際は、なるべく一次資料にアクセスする。 本来は表面処理法の一つであったメタリコンが芸術分野における新技術と新素材として導入・受容されていく経緯を、実際に制作された作品と残された関連資料による裏付けを行いながら解明し、メタリコンを美術史上に意義づけたいと考えている。
|
研究実績の概要 |
研究初年度にあたる2022年度は、スイスで発明されたメタリコンが日本へ導入された経緯の調査とメタリコン作品の調査に軸足を置いて調査を実施した。前者の調査として、天賞堂と日本メタリコン工業所の動向を文献調査を中心に行った。また後者の調査として、東京美術学校の関係者(卒業生や教員など)の動向を追跡した。彼らが制作に関わった(であろう)作品を中心に、制作年、制作経緯、素材、構造などを調査し、実見できる作品に関しては、所蔵先の施設に赴いて、自身の目で作品と対峙した。 今年度の調査の結論として、メタリコンの導入者である天賞堂が東京美術学校関係者とタッグを組むことで、メタリコン作品が誕生したと考えている。すなわち東京美術学校は、近代日本のメタリコン芸術の揺籃の場であったといえるだろう。 また、調査内容を基に論文(査読付き)を執筆して投稿した。当該論文は『東京藝術大学美術学部論叢』第19号に掲載された。本研究はスタート間もない芽ばえの研究であるが、研究成果を迅速に公表することを心掛けた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の調査対象を東京美術学校と天賞堂に絞り込んで調査を実施したため、おおむね予想どおりの成果を上げることができたと考えている。天賞堂がメタリコンの導入と受容を推し進め、朝倉文夫・渡辺長男・鈴木清など東京美術学校関係者と協力しながら、メタリコン作品を世に発表したことで、メタリコンの存在が浸透していったと考えられる。本来は金属業界における表面処理法の一つであったメタリコンが芸術分野を中心に発展したのが日本の特徴である。欧米では防蝕や防錆などの実用面での活用が中心であったのと対照的である。 今年度の調査を基礎として、次年度の調査では、さらに対象を広げ内容も深く掘り下げる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
調査に協力してくださった団体や個人に対して、調査報告として論文(『東京藝術大学美術学部論叢』)を送付したところ、その一部から新たな情報提供があったり、作品閲覧の許可が下りたりと、今後の調査の進展が期待できる動きがでてきたことは喜ばしい。 今後は前年度の調査を継続すると同時に、東京美術学校以外の制作者にも目を配りたいと考えている。メタリコン作品の作り手として、東京美術学校と背景を異にする職人や技術者などが想定できると考えるからである。東京美術学校で正式な美術教育を受けた彫刻家のほか、名前が残りにくい職人や技術者など、芸術家に限定されない幅広いメタリコン受容層が存在したのではないだろうか。 メタリコン作品には、外見の視覚情報だけで容易に判断できない独特の難しさが伴うが、その裏付けとなる資料調査を併せて行うことで、この難点を克服しようと考えている。昨年度の途中から国立国会図書館のデジタルコレクションのシステムが変わり、検索能力が従来よりも格段に進歩したため、今後は文献調査の一層の進展が期待できよう。 加えて論文執筆や口頭発表などを通じて、本研究の成果を社会に還元したいと考えている。
|