研究課題/領域番号 |
22K20055
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 東洋大学 (2023) 学習院大学 (2022) |
研究代表者 |
田中 美彩都 東洋大学, 国際学部, 講師 (90965790)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 朝鮮 / 家族 / 儒教 / 養子 / 異姓 / 伝統 / 宦官 / 僧侶 / 戸籍 / 韓国 / 姓 / 相続 / 朝鮮近代史 / 養子制度 / 家族制度 |
研究開始時の研究の概要 |
韓国では朝鮮時代(1392-1910)に端を発する儒教的家族制度が「伝統」とみなされ、学界もこの「伝統」に注目してきた。申請者は韓国の家族制度史を通時的に捉えることをめざして、研究の空白地帯である植民地期(1910-1945)の、儒教祭祀の継承のために同族から養子を迎える儒教的養子制度の展開を検討し、儒教的養子制度が植民地支配の影響下で民族意識と結びついて「伝統」化したことを指摘した。続く本研究課題では、朝鮮の養子制度が儒教的であることを前提とする既存の視点そのものを捉えなおすべく、実際には社会で行われてきた血縁関係のない養子を分析対象とし、植民地期の家族「伝統」の生成過程の一端を解明する。
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研究成果の概要 |
本研究では近代朝鮮の異姓養子の実態と変化の様相を、帝国日本の家族政策と朝鮮社会の対応から解明した。日本は朝鮮全土で実施した慣習調査で、儒教規範上は禁忌視される異姓養子が地域や階層に応じて異なる方式で行われることを把握しながらも、最終的な報告書ではこのことを反映せずに朝鮮王朝の定義に則り整理した。その後、朝鮮の異姓養子縁組は民籍登録や民事訴訟などを通じて、無効とされたり、便宜上、新たに創出されたりした。日本が朝鮮に婿養子を導入する過程で表出する異姓養子縁組への朝鮮人の認識は、階層や職業、ジェンダーなどで異なった。儒教規範に基づく家族制度に潜む「多様性」は、近現代にも形を変えつつ継続したといえる。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では日本が慣習調査で異姓養子の「多様性」を把握しながらも、最終的には朝鮮王朝の法典上の定義に基づいて異姓養子の概要を整理したことを示した。従来の研究は概ねこの整理の範疇を逸脱しないが、近年の朝鮮時代史研究が紹介する法典の規定外の異姓養子例をふまえると、既往研究は日本の創出した定義を受容した可能性が高い。研究史の再考を促す点に本研究の学術的意義が認められる。 また本研究は、現代韓国で家族「伝統」守護の立場をとった儒林が、植民地期には異姓養子導入に反対しなかったことを指摘した。家族の「伝統」が強調されがちな韓国社会を重層的に把握するための視野を提供する点で、本研究の社会的意義は大きいといえる。
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