研究課題/領域番号 |
22K20057
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
鈴木 悠 東海大学, 政治経済学部, 特任講師 (70963669)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 日英関係史 / 国際関係史 / イギリス帝国史 / イギリス外交史 / 日本外交史 / 日本帝国史 / 東アジア国際関係史 / 帝国史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1895年から1902年の日本とイギリスの外交関係が、世論や政府外アクターにどのように影響されたのかという点に注目する。この時期の日英関係史研究についてはすでに多くの優れた先行研究が存在するが、これらのほとんどは両国政府の外交方針決定過程の中での政府内要人同士の意見交換に焦点が当てられている。これらの人物が日英両国の最重要アクターであったことは事実だが、一方で既存の研究の多くが踏襲しているアプローチには彼等が政府外からどのような影響を受けたのか解らないという欠点がある。以上の点を意識して、19世紀末国際関係史研究全般にも新しい視座を提供できるようなアウトプットを生み出したい。
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研究実績の概要 |
本研究の実施者は、近代屈指の世界大国イギリスが、19世紀以降の東アジアの国際環境をどう影響したのかということに関心を抱き、それを理解する一環としてこれまで1876年から1895年までの時期の日英関係史研究に携わってきた。 本研究者が意識してきたのは、近代日英関係史研究において広く浸透している、同時期の日本とイギリスの関係は概ね友好的だったみなす通説を再検討することである。19世紀後半の時期に関しても、条約港開港直後の暴力の応酬を乗り越えた後の日英関係は、イギリスが日本に近代社会のエッセンスを伝授した「良き師弟関係」に変容し、また軍事外交的にも利益を共有したと理解されることが多い。 この通説に対して本研究者は、1895年以前の日英関係は、友好的と言うには程遠い状況であったということを主張してきた。この時期の東アジアにおいては、清朝中国が地域最大の勢力として台頭しており、日英両国は清朝との関係を優先させざるを得なかった。また、明治初期は条約改正問題が日英間の最重要外交課題として残っており、この問題が解決されないうちは両国の接近は難しかったのである。 しかしながら、それにもかかわらず日本とイギリスは日清戦争終結からわずか7年後に日英同盟を締結するに至った。それがなぜできたのかという観点から、日英関係を再検証することが、本研究の問題意識となる。そして、この点を明らかにする上で、本研究は、世論が日英関係に与えた影響に注目する。1895年から1902年の時期の日英関係史研究には、すでに多くの優れた先行研究が存在するが、世論や政府外アクターが、政府の外交方針決定過程をどう影響したのかという点の検証はまだ不十分である。以上の点を意識して、本研究は19世紀末の日英関係史や国際関係史研究に新しい視座を提供することを試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、2020年度にスタートさせたものだが、その後しばらくコロナウイルスの世界的感染拡大の影響で思った以上に研究を進めることができなかった。だが、科研費研究スタート支援に採用していただいた2022年度から、コロナ禍が終息し始め、行動制限が緩和されるようになってきたことから、ようやくこの研究を本格的に進めることができるようになった。 2022年度を通じて、東京の史料館各所に所蔵されている、イギリスの政府関係公文書史料の調査を本格的に開始し、2023年3月にはイギリスでの史料調査も実施することができた。 2022年度は、19世紀末期の日英研究について検証を進め、2023年3月にはその研究成果を第125回軍事史学会関西支部定例研究会で報告した(報告タイトル「日清戦争に対する列強干渉-イギリスを中心に考える」)。また、本研究を進めていくうちに、1895年から1902年の日英間外交が世論によってどのような影響を受けたのかということにも関心を持ったことから、当時東アジアに展開していた条約港に在住していた西洋の人々が東アジア国際関係にどのような影響を及ぼしたのかという点にも関心が強まった。そしてそのような問題意識の中から、東アジアの条約港体制そのものの検証にも関心が強まるようになった。この分野においても、まだまだ研究に深化の余地があるので、この問題意識も維持していきたい。 国内外での史料調査を本格的に再開するかたわらで、2022年8月には、日本外交史の大学教科書として刊行される『国際政治のなかの日本外交史』(片山慶隆編)に、「変容する国際環境の中で――条約改正予備会議から三国干渉まで、一八八二~九五年」を寄稿した。この編著は、日本外交史の大学学部生向けの教科書として、2023年夏に法律文化社から刊行される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】の項目で記載した通り、本研究は、2020年度にスタートさせたものだが、その後しばらくコロナウイルスの世界的感染拡大の影響で思った以上に研究を進めることができなかった。科研費研究スタート支援に採用していただいた2022年度から、コロナ禍が終息し始め、ようやく本格的に進めることができるようになったので、2023年度も本研究を進めていきたいと考えている。 2022年度は、所属する研究機関から付与された研究費を用いて国内外の史料調査を実施したので、科研費は使用していない。その分、2023年度に使用できる科研費が多く残っているので、より多い頻度で海外調査を行うことが可能である。そのため、2023年度はイギリスだけでなく、東アジアにおける日英関係を影響したアメリカ合衆国の史料も積極的に調査する予定である。 また、本研究の成果の一環として2023年3月に軍事史学会関西支部定例研究会で報告した、「日清戦争に対する列強干渉-イギリスを中心に考える」を、学術論文として発表する準備を進めている。それに加えて、本研究から派生する形で発展した、当時東アジアに展開していた条約港に対する関心についても、すでに何度か学会・研究会の場で報告しているので、このテーマについても、日本語と英語の両方で論文執筆を進めている(日本語「明治期日本の条約改正問題とイギリスの政府方針-1887~1894年を中心に」/英語 ‘Treaty Port System in East Asia in the Late Nineteenth Century: A British Informal Empire or an International Regime?’) 2020年から少しずつ進めてきた研究の中から、論文という形でのアウトプットを発表できるように努めていきたい。
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