研究課題/領域番号 |
22K20068
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
小倉 頌子 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 主任技師 (50966273)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 奈良三彩 / 胎土分析 / 蛍光X線分析 / 統計分析 |
研究開始時の研究の概要 |
奈良時代の代表的な考古資料の一つである奈良三彩は、奈良県内を中心に全国で出土しているが、確実な生産地とされる遺跡は発見されていない。奈良三彩は限られた期間のみ製作された特殊な陶器であるため、生産地が判明すれば古代社会における稀少な陶磁器の生産・供給体制を解明する鍵となり得る。生産地が不明であっても、材料に違いがあることが分かれば、少なくとも原料採取地が複数あった、あるいは製作工程の異なるものがあったと考えることができる。本研究では、奈良三彩の生産地を探るための基礎研究として、自然科学分析を用いた非破壊的手法により個々の奈良三彩の特徴を明らかにし、多様な側面から統計的に分類することを目的とする。
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研究実績の概要 |
令和5年度はSPring-8にて放射光を用いた胎土の蛍光X線分析を実施した。初回利用となる今回は、従来分析に用いてきた装置では測定が困難であった元素(アルカリ土類金属や軽希土類元素)の有無を確認することを主目的とした。そのため定性分析を主とし、個々の試料ごとに検出された元素を確認することとした。分析の対象とした試料は、奈良県内の遺跡(平城京跡、豊浦寺跡ほか)より出土した奈良三彩19点である。分析の結果、いずれの試料もBaやLaといった元素のピークを確認できたほか、豊浦寺跡の一部試料のみSnを顕著に検出した。Snの検出要因については現在調査中であるが、奈良三彩の胎土の分類において重要な指標になり得る可能性も考えられる。分析時のエラーの可能性も含めて精査していくとともに、定量分析についても検討したい。 奈良県内出土奈良三彩については、継続して分析データの収集をおこなっている。令和5年度は二光寺廃寺(奈良県御所市)より出土した三彩陶器片の胎土分析をおこなった。他遺跡の奈良三彩と比較すると、K, Ca, Alなどの含有量に差異があり、少なくとも平城京跡出土品とは胎土の元素組成が異なる可能性が示唆された。本件については、日本文化財科学会にて成果を報告した(小倉ほか「御所市二光寺廃寺出土三彩陶器の胎土分析-個体間および出土遺跡間における比較検討-」『日本文化財科学会第40回記念大会研究発表要旨集』日本文化財科学会 2023)。 また、出雲市鹿蔵山遺跡の奈良三彩の胎土分析結果について(令和4年度実績報告済み)、奈良県内の奈良三彩と比較しクラスター分析による統計解析をおこなった。その結果、平城京跡や豊浦寺跡の奈良三彩とは胎土の特徴がやや異なる可能性が指摘できた。(小倉ほか「鹿蔵山遺跡出土奈良三彩の再検討と胎土分析」『出雲弥生の森博物館研究紀要』第12集 出雲弥生の森博物館 2024)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
奈良県内出土資料の調査および分析は概ね順調に進んでいる。しかし一方で、日常業務および外部の資料所蔵機関の都合上、令和5年度は外部機関の資料調査を実施できなかったため、当初計画より奈良県外資料のデータ収集が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度のSPring-8利用申請課題が採択されたので、昨年度分析できなかった試料を分析するとともに、前回の測定条件では検出しきれなかった微量重元素が他にあるか否か確認する。また、外部機関所蔵資料の分析に対するハードルを下げるため、これまで分析してきた奈良三彩について、異なる分析装置や測定条件で分析した場合に分析結果にどれだけの誤差が生じるか検証を急ぐ。
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