研究課題/領域番号 |
22K20071
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中村 友香 筑波大学, 人文社会系, 助教 (50962982)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 南アジア地域研究 / ネパール / 食 / 未来予期 / 治療実践 |
研究開始時の研究の概要 |
ネパールの糖尿病患者についてこれまでに行った調査では、自分の身体症状がどうなっていくのかをあえて想像しない、という患者たちの態度が見られた。この態度は、病気に関するリスクを示し、予防を指導する医師らとのずれを生んできた。ネパールにおいて近代医療の持つ権威は限定的であり、病気・身体についての未来予期や、災いに対する応答は、伝統治療や宗教、身体感覚等と関わりながら、リスクと予防の観念とは異なって存在している可能性がある。本研究は、医療従事者や危機管理専門家によるリスクや予防の観念と患者たちの実践を対照しながら、現代ネパールにおける未来予期と災いへの応答について実証的に明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
研究計画において本年度は、未来予期や災いへの応答の生成・再編について患者たちの態度や実践に関する変化について聞き取り調査を行った。特にCOVID-19感染拡大時に行われた生活・生業の実態について、またそれに伴う食観念や食べ物消費と食べたその先の身体観の変化や拡張について聞き取り調査を行った。 ロックダウン下において食料不足を懸念する動きは、備蓄ではなく増産をもたらしていた。特に調査地域である西部ネパールの地方都市では地鶏の生産と販売の拡大が特徴的な現象として指摘された。地鶏は地域における小規模生産が可能であることもあり食糧危機への対応としての側面を持っていた。地鶏を食肉用として販売するにはある程度の時間が要するが、小さな庭先や田畑、路上等でも飼育が可能であったために小規模飼育・生産が増加したという。さらにそれに加えて地鶏は熱冷理論に基づきその消費がCOVID-19の予防になるとも考えられたことが明らかとなった。主にそうした二つの要因より、飼育・生産が増加したことが明らかとなった。本調査からは、災いに対する応答が一対一対応ではなく、環境・身体・経済が絡まり合う現象として生じており、また災いが去ったと見なされた後の人々の身体観にも部分的に影響を及ぼしていることが明らかとなった。 本研究の成果の一部は、医療社会学会(「食と健康」分科会で)『ネパールにおけるブロイラーと熱/冷理論 』というタイトルで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19が完全に終息したと現地においてみなされており、COVID-19感染拡大時の実践への記憶が薄れつつあり調査計画の部分的修正が必要となったため。また必要な長期調査が十分な期間をもって行うことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、以下の2つについて調査対象を絞って長期調査を行うことを計画する。 第一に、2023年度に計画していた患者への調査を継続する。特に、薬剤利用や食事療法、アーユルヴェーダ等の利用に関する態度の変化について調査を行う。第二に昨年度の調査で明らかとなった地鶏/ブロイラー関係に焦点を当てて、食観念と未来予期の関係から調査を進める。 研究成果については、日本南アジア学会の学会誌への論文投稿と、英語での学会発表を行うことを目標とする。
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