研究課題/領域番号 |
22K20076
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小谷 真千代 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (00945587)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | モビリティ / 仲介業 / 移民労働者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、日系ブラジル人労働者を企業へと斡旋する派遣会社を事例として、仲介業者によるイメージの生産過程、およびそれが労働者の移動という選択や行動にいかに影響を与えているのかを明らかにする。第一に、SNS上の広告分析から、日本での就労に関してどのような知識が一般に流通しているのかを検討する。第二に、派遣会社への聞き取り調査から、企業や労働者に宣伝される日系ブラジル人労働者イメージの生産過程を検討する。第三に、企業および労働者への聞き取り調査から、派遣会社が生み出したイメージの集団的受容過程を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、仲介業者による知識の生産を通じて移民労働者のモビリティが生み出されるメカニズムを明らかにすることにある。そのため本研究では、3つの課題(1)文献やSNS上の広告を通じた現在の日本就労に関する情報収集(2)派遣会社へのイメージ戦略に関する聞き取り調査(3)日本側の取引先企業と労働者によるイメージ受容に関する聞き取り調査に取り組んでいる。今年度は特に、第一と第二の課題を中心に研究を進めた。 第一の課題では、旅行会社および派遣会社ブラジル現地法人がFacebookおよびInstagramに掲載している広告を収集した。2020年3月以降パンデミックにより一旦は日本への送り出しが停止したが、同年中には少しずつ再開しており、なかにはその送り出しの様子を頻繁にSNS上で報告する業者も見られた。このことから、パンデミック下にあっても、ブラジルからの送り出しが完全に停止していたわけではないということが指摘できる。 第二の課題では、ブラジル・サンパウロで労働者を送り出す派遣会社および旅行社の求人・営業戦略に関する聞き取り調査を実施した。聞き取りからは、パンデミック以降、求人から送り出しに至るまで一連のプロセスの電子化が進められていることが明らかになった。今後は聞き取りを詳細に分析し、デカセギ送り出しにおける技術の変化と派遣会社とのイメージ戦略との関係性について検討していく予定である。 第三の課題については上記の海外調査を優先して行ったため、まだ着手できていない。今後は第一、第二の調査結果をふまえて、国内調査を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初はコロナ感染症拡大により海外調査が実施できるか不明であったが、出入国に関する規制緩和のタイミングでブラジル調査を実施することができた。また、ブラジルでの調査対象からの紹介を受け予定外であったアルゼンチンでも調査を実施したことで、求人の規模や方法等、ブラジルとは異なる前提のもと事業を展開する業者の求人戦略についても聞き取りをすることができた。 ただし、第三の課題については上記の海外調査を優先して行ったため、まだ着手できていない。パンデミック下におけるブラジルからのデカセギ送り出しの動向と現状を把握し、ブラジル側の業者から見た日本政府や日本企業からの対応について情報を得られたことは、今後の国内調査計画や質問票作成をすすめていくうえでも有益であったと言える。今後は第一、第二の課題に関する調査から得た結果をもとに、日本側での派遣会社・送り出し先企業の対応についての調査を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、2022年度に収集した文献や広告、パンフレットなどの資料の言説分析を進めていく。それと平行して、労働者のモビリティに関する日本語・英語文献を読み込み、研究全体を貫く論点を明確化したい。 第二に、昨年度の聞き取りデータを分析し、論文化していく。特に注目したいのは、パンデミックの影響から、労働者の能力や振る舞いなどが数値・映像データ化され即座に日本に送られ、採用プロセスにおけるブラジル法人の採用者の裁量は減少する一方、日本企業側からの細かい希望や判断が即日採用行動に反映されるようになっていたという点である。このような状況下で、派遣会社や旅行社は、外見や話し方など労働者のふるまいを厳しく審査していた。こうした送り出し事業の機械化が、企業に対する営業・労働者に対する求人のためのイメージ戦略とどのように結びついているのかを今後考察したい。その際、Findlay, A., McCollum, D., Shubin, S. Apsite, E. and Krisjane, Z.らの「よい移民」の生産に関する考察が手がかりになると考えている。 第三に、上記したブラジル調査の結果および考察をふまえて、日本側の派遣会社およびその派遣先となる企業に対する聞き取りを実施する。具体的には、デカセギ送り出しの変化が、日本法人や取引先企業のいかなる事業展開と結びついていたのか、さらに、派遣会社ブラジル法人が生み出した労働者のイメージや現実の労働者のふるまいを彼らがいかに評価しているのかを調査する予定である。
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