研究課題/領域番号 |
22K20079
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
美麗 和子 東京女子大学, 現代教養学部, 研究員 (70964451)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 費孝通 / 中国 / 建国初期 / 貴州 / 少数民族 / エスニシティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、中国の民族学者・社会学者であり、中華人民共和国成立以降、国家指導者の一人として民族工作・民族政策に携わった費孝通(1910-2005)の民族認識の道筋を、彼の著作から跡付けることにより、その背景にある20世紀の中国における民族論の形成と変容の過程を解明することである。研究の主軸は、新中国建国初期に発表された「兄弟民族在貴州」(1951)と、改革開放政策始動以降の「中華民族多元一体格局」(1989)の相違点、及び一貫性の考察である。また、一学者に対する上記の考察を通じて、学者と行政、学問の政治的需要との関係についての検証も視野に入れる。
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研究実績の概要 |
本年度における研究実績は、以下の通りである。 (1)昨年度の主な分析課題とした「兄弟民族在貴州」(以下「在貴州」)全7編のうち、後半の3編「烏撒的余留」「一章活的社会発展史」「少数中的少数」を日本語訳し、「貴州にいる少数民族:費孝通著「兄弟民族在貴州」翻訳(下)」として『東京女子大学論集』第74巻2号に発表した(前半4編「千山万山訪兄弟」「血涙話当初」「労働的苗家」「仲家,団結起来」についても日本語訳を行っており、これらは本研究課題外の成果として前掲『論集』第73巻2号に発表した)。底本には、初出である雑誌『新観察』1951年3月から同年6月発行の記事を用いた。また、訳出にあたっては、全7編について『費孝通文集』(1999年発行)収録のテキストとの比較対照も行っている。 「在貴州」では、費自身の貴州訪問体験や現地調査の結果に加え、現地に居住する各少数民族の来歴について『明史』をはじめとする正史や『貴州通志』などの地方志、『咸賓録』『渓蠻叢笑』など西南少数民族に関する史書等の歴史文献が幅広く引用されている。本年度までの翻訳作業を通して、これらの史籍に触れることでより広い視野が得られた。費の民族認識形成の背景として今後、建国初期の少数民族研究における史料利用状況の把握とともに、更なる理解に努める。 (2)上述(1)に対し、費の民族認識分析における両軸の一方に設定している「中華民族多元一体格局」(以下「多元一体」)研究については、本年度は関連資料の把握と収集にとどまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度予定していた「多元一体」論の読み込みが進んでいない。また、関連資料収集のため年度内の渡航を計画していたが、その他の業務の都合や渡航先の状況等により、実施を延期した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)次年度は「多元一体」論の分析を第一の作業課題とする。 (2)上記(1)を経て、本年度までに読み込んだ建国初期の著作における費の言説との比較検討に進む。 (3)民国期における費孝通の民族論、例えば1930年代の「民族」をめぐる顧頡剛との論争についても検討する。これは、上記(2)の比較検討における参考資料として、研究計画の段階で設定していたものである。
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