研究課題/領域番号 |
22K20101
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0105:法学およびその関連分野
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
大角 洋平 愛知学院大学, 法学部, 講師 (10923542)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 黙秘権 / 心理学 / ゲーム理論 / 未決拘禁 / 刑事訴訟法 / 法と心理 / 法と言語 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、取調べ前の被疑者に対する権利告知制度の最適化を図る。具体的には、取調べ開始前に捜査機関が(1)黙秘権とその行使態様、(2)弁護人の助言なしに行われる供述の危険性等、(3)違法な取調べへの救済策を、順次説明した上で権利理解度テストを行い、理解度の高い者に対して取調べを行うといった取調べ態様を検討する。 取調べの進行に沿った告知により、被疑者の制度理解度の向上を図るものであるが、それは、理解度の低い者にとって、供述採取制度が内包する複雑性を縮減することに繋がる。また、告知すべき内容を現行法のそれに留めず、更に豊富にすべきかも検討を行う。これら検討を通じて、あるべき権利告知制度を提示する。
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研究実績の概要 |
【研究成果の具体的内容】本研究は被疑者に対する権利告知制度の機能や被疑者の権利理解度の法的位置付けを検討している。本年度では、(1)権利告知制度の機能につき、取調べという場面を被疑者と取調官との戦略的状況とみなすことにより検討を深めた。戦略的状況下では、取調前に被疑者に告知すべき内容は豊富になりうるとした。さらに、(2)権利告知が充実しているアメリカ法を参照し、被疑者の権利理解度の測定方法を調査した。アメリカでは権利理解度を測定する標準的手法が学際的見地から開発が行われている。日本が学ぶ点は多いものの、権利を理解しているという事情が法的にいかなる位置づけを有するのかが未だ解明されていないことを指摘した。 【意義】学説上、黙秘権の不告知の違法性は軽微なものと認識されていたが、その認識の妥当性を検証することに繋がる。また、先行研究では権利理解度の法的位置付けは充分検討されておらず、未解明領域の発掘に繋がったと思われる。 【重要性】今後、取調べという制度はより複雑なものとなりうる。それは、様々な状況に即した取調べを実現することを可能とする一方、被疑者に対して要求される理解能力の引き上げを意味する。しかし、被疑者が自身の有する権利や自らを取り巻く環境・制度について十分な理解を得ていない場合、制度が期待するメカニズムがうまく作動しない恐れがある。今後、供述採取制度はより一層展開されることが予想されるが、本研究はそのような制度が機能不全に陥った場合の応対を考える基礎的作業にも繋がっていると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現行法に関する調査や、取調べの戦略的状況についての検討は済んでいる。またアメリカにおける権利理解度調査についても概ね順調に進んでいる。研究成果の一部は、研究会等において報告を行っており、論文での公表準備も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカにおける権利理解度の調査方法については、いくつかの流儀があるように思われるため、その点についての深掘りを行っていく予定である。また、権利理解度が法的にはいかなる位置づけを有しているのかについて、自白の証拠能力や訴訟能力との関係で分析を行っていく。
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