研究課題/領域番号 |
22K20154
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥井 亮 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (20563480)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | パネルデータ / 波及効果 / 連関構造 / 機械学習 / 構造変化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、パネルデータを用いて経済主体間の波及効果とその連関構造がどのように変化し ているかを捕捉する計量経済学の手法の開発を目的とする。どの経済主体がどの経済主体に影響をあたえるのかという波及効果の連関構造が未知であり、さらにそれらが未知の構造変化点において変化する状況を考える。波及効果とその連関構造そして構造変化点を推定する手法を機械学習の手法を発展させることで開発し、漸近理論とシミュレーションによって、その性質を調べる。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、パネルデータを用いて経済主体間の波及効果とその連関構造がどのように変化し ているかを捕捉する計量経済学の手法の開発を目的とする。どの経済主体がどの経済主体に影響をあたえるのかという波及効果の連関構造が未知であり、さらにそれらが未知の構造変化点 において変化する状況を考える。波及効果とその連関構造そして構造変化点を推定する手法を機械学習の手法を発展させることで開発し、漸近理論とシミュレーションによって、その性質を調べる。 今年度は、連関構造のある線形パネルデータモデルにおける連関構造と構造変化の推定法を開発した。連関構造が疎である 、つまりそれぞれの主体は少数の他の主体からしか直接の波及効果を受けないと仮定する。そして、疎の場合に有用な手法である、罰則付き最小二乗法を一種である LASSOを元にした手法を提案した。 提案する手法は、3段階推定量である。罰則つき最小二乗法の一種であるLASSOを基にしたものであるが、LASSOを一回適用するだけでは、推定量が望ましい性質をもたない可能性がある。そこで、LASSO推定量を一段階目 として、構造変化点を最小二乗法で再推定する第二段階をおく。さらに、第三段階として、連関構造を二重機械学習法によって再推定する。 今年度は、第二段階で得られる構造変化点の推定量が非常に速い収束速度において一致性を持つことを証明した。これは、高次元データにおける構造変化点推定の文献で得られたものよりも速い収束速度であり、パネルデータの特性を利用することにより、可能となったものである。また、関連して、高次元パネルータモデル一般の推定についての研究や、変数が内生性を持つため操作変数が必要となる場合の機械学習法の応用についての研究も進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、推定手法の開発と、構造変化点の推定量の性質を理論と数値実験の両面から解明した。 これは申請書で述べた初年度の研究計画の内容に沿ったものであり、研究は順調に進展しているといってもよいと考えている。特に、1段階目の推定量の収束のオーダーが十分に早いことを示せ、また、2段階目の構造変化点の推定量は、高次元データにおける構造変化点推定の文献で得られたものよりも速い収束速度を、パネルデー タの特性を利用することにより、得ることができた。これらの結果は、申請時に立てていた予想と整合的なものであり、研究を予定通り進めることができていると考えている。また、数値実験の結果もこれまでのところ漸近理論と整合的なものが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究課題の最終年度であるので、残りの分析を遂行し、論文投稿する予定である。 まず、3段階目の二重機械学習法によ連関構造の推定量が漸近理論の観点から望ましい性質を持つかどうかを調べる。特に、漸近正規 があるか、統計的推測が可能か、標準誤差の計算は可能か、が分析の重要課題である。二重機械学習法の文献の知見をパネルデータ分析に応用する計画である。現状では、横断面データの場合にはどのように二重機械学習法の理論分析を進めればよいのかは理解できたが、パネルデータは時系列構造を持つことから、相関構造があるデータにおける二重機械学習法の理論分析の手法を文献を読みながら理解を進めているところである。二重機械学習法の理論はこの研究課題を提出してからも進んでおり、今年度で問題なく、この分析は遂行できると考えている。 また実証例を用いて提案手法が実際のデータでどのように機能するかを調べる。国レベルのパネルデータを使用し、各国の研究開発がどのような波及効果を持つのか、その連関構造に構造変化があるのかを調べる。データはすでに整理しており、分析を進めているところである。ただ、データの取り扱いについて既存文献でも議論があることが判明しており、この点を注意深く精査しながら分析を進める必要がある。 また成果を公表するために、論文執筆をすすめ、学会やセミナーで発表する。また研究成果が広く実証分析で使われるように、統計ソフトのパッケージを開発する。最後に論文を国際的な学術雑誌に投稿する。
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