研究課題/領域番号 |
22K20171
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
児玉 麻衣子 明治大学, 経営学研究科, 特任講師 (90967192)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 管理会計 / マネジメント・コントロール ・システム / ホスピタリティ産業 / 促進型MCS / イネーブリング・コントロール / コミュニケーション / マネジメント・コントロール / 場の理論 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国の主力産業であるにも関わらず,ホスピタリティ産業は先進国と比較すると非常に生産性が低い。この問題意識の下,これまでの研究では,先端事例の調査を通じて,促進型MCSが組織成員に働きかけて業績向上に繋がる行動を動機づけるメカニズムを解明し,モMCSデルを構築した。しかし,本モデルが財務業績に与える検証は未了という課題がある。 促進型MCSとは,従業員に発言権や裁量を与え,知識共有を促進することで,現場が不確実性に自律的に対処するよう支援することを特徴とする。 本研究は,リサーチサイトでの量的調査によって,モデルを発展させるとともに,東証上場企業への調査によって一般妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ホスピタリティ産業の生産性向上に資するマネジメント・コントロール・システム(MCS)モデルの理論的な完成度を高めるという目的のもと、リサーチサイトであるホテル業A社およびケアハウス業B社における縦断的な量的調査と、東証上場企業を対象とした横断的な量的調査実施することを目指すものである。 2023年度は、下記のとおり研究を進めた。 研究課題1「A社・B社におけるモデルの量的妥当性の検証」では,促進型MCSと従業員の心理や行動,顧客レベルの成果(顧客満足・顧客ロイヤルティ),財務成果(利益・生産性)間の縦断的分析を実施する計画である。リサーチサイトであるA社およびB社より、2023年度の従業員を対象としたアンケート調査データと顧客満足度調査データ、財務データを入手し、過年度のデータと統合、分析した。分析結果については,現在論文を執筆中である。 研究課題2「東証上場企業への調査を通したモデルの一般妥当性の検証」では、東証に上場している企業に務めるミドルマネジャーを対象とした横断的なアンケート調査を実施した。データの解析を行い、分析結果についての学会報告および論文執筆・投稿をした。 研究では、ホスピタリティ産業において求められるプロアクティブ行動に着目した。要求されるサービスレベルが高い我が国において顧客満足を維持し高めるためには、現場の組織成員が顧客の顕在ニーズだけではなく潜在ニーズを掬い取る必要がある。また、顧客との相互作用の中で即興的に顧客ニーズを満たすことが求められる。そのため、指示命令に基づく行動の実行ではなく、自ら考え主体的に行動しなければならない。MCSへの要請も変化しており、現場が自らの仕事を支援するために用いることができる促進型MCSの有効性が注目されている。研究課題2では、促進型MCSとプロアクティブ行動の関連と動機づけのメカニズムの検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題1および研究課題2を遂行するために必要なデータを収集することができた。しかし、研究課題1については進捗が遅れている状況である。これは、扱うデータ量が従業員意識調査データ、顧客意識調査データ、財務データと多岐に跨っており、想定よりもデータの統合が遅れてしまった。 研究課題2については、2022年度に収集したデータを分析し、研究課題における仮説を支持する分析結果を得ることができた。さらに、計画通りに成果の学会での発表ならびに学会誌や紀要への投稿を行った。 しかし、研究課題2を進める中で、ホスピタリティ産業における生産性向上に資するMCSモデルを構築するにあたって、個人レベルのデータしか収集できていない限界に直面した。現場における生産性向上プロセスを考えるにあたっては、チームや集団の相互作用と、その帰結としてのパフォーマンスの発揮が重要である。そのため、集団レベルのデータを収集する必要性が生まれた。そこで、2023年度末に、再度上場企業を対象とした横断的調査を実施し、データを収集した。現在、データは分析済みであり、論文の投稿に向けた執筆を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、以下のとおりに推進する予定である。 ・追加で実施した東証上場企業の調査データを用いて実施した促進型MCSと集団心理・行動への影響のメカニズムを明らかにした研究の成果について学会で報告後、論文を投稿する。 ・さらに追加で東証上場企業に対する横断的なアンケート調査を実施する。これは、促進型MCSを単体で用いるだけではなく、従業員の行動を制約するようなMCSと組み合わせることや、企業の信条や境界を伝達するシステムとの組み合わせを考慮することによって、組織成員の態度や行動にどのような影響をもたらすのかを検証する。 ・各社へ継続的に実施しているアンケート調査・インタビュー調査データを用いて、当該モデルの妥当性を時系列で分析する。さらに、従業員データ、顧客データ、財務データというマルチソースのデータを統合して分析する。マルチソースのデータを用いた時系列に分析することができれば,分析に係るコモンメソッドバイアスの問題を大幅に解消することができ、非常に有用な研究成果となりうる可能性が高い。
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