研究課題/領域番号 |
22K20208
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 国立社会保障・人口問題研究所 |
研究代表者 |
吉田 航 国立社会保障・人口問題研究所, 情報調査分析部, 研究員 (70962992)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ダイバーシティ / 女性管理職 / 企業パネルデータ / 組織 |
研究開始時の研究の概要 |
いわゆる「女性活躍」をめぐる法的・社会的圧力の高まりを背景に、多くの日本企業が、両立支援策の充実や働き方改革に着手している。国内の先行研究は、これらの施策を実施する企業で女性の管理職が多いことを示すものの、その多くが1時点の観察にとどまっており、施策の導入が、実際にその後の女性管理職比率を増加させているかは明らかではない。 そこで、同一企業を長期間観察したパネルデータを利用し、各種ダイバーシティ施策の導入が、企業の女性管理職比率に与える影響を明らかにする。さらに、組織内外の要因によって、施策の効果がどのように変化しているかも解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、企業が実施する様々なダイバーシティ施策(diversity policies)が、その後の女性管理職比率を高めているかどうかを、国内大企業を追跡した企業パネルデータの分析によって明らかにするものである。 本年度は、(1) 専任部署設置の効果検証、(2) 外国人や障害者雇用との比較分析、(3) 企業データを分析する際の方法論的検討、の3つの課題に取り組んだ。 (1) は前年度から取り組んでいる課題であり、日本企業において、部署の設置はその後の女性管理職比率を高めるとはいえないこと、ただし、女性役員比率が一定水準を超える企業では部署設置が有効であることを示したものであった。この成果については、前年度から継続していた査読が完了し、国内の学術誌に掲載された。 (2) については、各種施策が女性管理職比率に与える効果の位置づけを、女性従業員比率、ならびに外国人管理職/従業員や障害者雇用に与える影響との比較から明らかにすることを目指した。分析の結果、雇用の多様性を促進する各種施策の効果がもっとも顕著に現れたのは女性管理職比率であり、近年の日本企業はとくにこの領域に優先的に取り組んでいることが示唆された。分析結果は論文にまとめ、次年度の国際学会で報告を予定している。 (3) について、女性管理職への効果を考えるにあたり、組織レベルで平均的に比率を高めることと、社会全体で女性管理職の数を増やすことは、分析レベルで区別されなければならないが、この点は先行研究でほとんど明示されてこなかった。そこで、この2つを識別する分析戦略を提示し、ときに両者の知見が一致しないことを明らかにした。この結果は国内学会で報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度から審査を継続していた部署設置の効果に関連する研究を、査読付き論文として公開することができた。また、分析を進めていくうえで、組織の計量分析一般に関わる方法論的課題を発見し、分析・公表を行うことができた。こうした点では、当初想定していた以上の成果を上げることができたといえる。 前年度から引き続き検討していた、外国人・障害者雇用との比較分析についても、データ分析は完了し、一定の知見をすでに得ている。しかし、論文として知見をまとめることに予想以上の時間がかかり、本年度中に学会発表や論文の形で成果を公表することはできなかった。 こうした進捗状況を踏まえ,達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度を踏まえ、研究期間を1年間延長し、ダイバーシティ施策が企業の女性管理職比率に与える検討をさらに進めることとした。とくに、前年度からの継続課題である、外国人・障害者雇用との比較分析については、2024年6月にすでに国際学会での発表を予定している。学会後には、すみやかに成果を論文として投稿することを目指す。 また、前年度に国内学会で公表した組織の計量分析に関する方法論的検討も、論文としての公表には至っていない。この成果も査読付き学術誌に投稿し、広く知見を公開することを目指す。
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