研究課題/領域番号 |
22K20228
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 東京通信大学 |
研究代表者 |
福士 珠美 東京通信大学, 人間福祉学部, 教授 (40713615)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 責任ある研究とイノベーション / 脳神経倫理 / 神経権 / 産業規格 / 国際標準 / Brain-Computer Interface / 科学教育 / 技術倫理 / 生命倫理 / 専門職倫理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、脳-機械インターフェイスに代表される、ニューロテクノロジーやブレインテックと呼ばれる、脳科学研究の進展によって医療現場を超えた普及可能性が高まりつつある先端技術(以下「脳科学技術」とする)の現実社会への実装に備え、日本国内の多様な学術分野で散発的に論じられてきた脳神経倫理の要素項目に「責任ある研究とイノベーション」という横串を通して、知識の統合と体系化をはかっていく。また、脳科学技術の開発者、提供者が当該技術の社会受容プロセスに健全な倫理観を以て関与するために有用な知識を「倫理教育パッケージ」として、専門職集団や高等教育課程における教育現場に提供可能な形でまとめる。
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研究実績の概要 |
本研究は、「責任ある研究とイノベーション」の観点から、日本における脳神経倫理関連知識の体系化を試み、脳科学技術の実社会への適用、普及を見据え、脳科学技術を開発、提供する専門職集団および専門職を志す高等教育課程に特化した倫理教育パッケージを提案することを目的としている。 本年度は日本の大学・大学院に加え、米国の大学・大学院の公開シラバス調査と日本の大学、大学院の関係者を対象としたウェブアンケート調査(9月まで回答募集)を実施した。これらの成果を3件の学会(国内学会1、国際学会2)において、日米の脳神経倫理教育の実施状況(担当学部、独立科目か応用倫理科目の一部か等)の比較結果や、日本の大学・大学院における脳神経倫理科目の実施形式、シラバスに取り込むべき内容等の回答集計結果について報告し、技術者倫理、工学教育、神経工学の有識者との意見交換を行った。そして、国際学会で得られた意見に基づき、欧州の大学・大学院の公開シラバス調査を追加実施した。 また、各国政府機関、民間調査機関、および国際機関が発行した脳神経倫理関連報告書における政策提言における「神経権」の扱いや掲載専門用語の定義に関する調査成果に、産業規格の国際標準活動の動向と日中韓の参画状況調査を追加し、国内学会ワークショップを企画した他、査読付原著論文を執筆、採択された。 なお、脳神経倫理に関連する文献情報の収集およびテキスト分析に関しては、特に和文文献について、オープンアクセス論文を調査対象とする限りには分析に足る十分な情報量が得られないことが確認され、代替として国内外で発行されている英文原著論文のテキスト分析用のオープンデータを取得して調査を継続することとした。 以上の成果に基づき、Neurotechnologyの社会実装に関する倫理教育を題材とした脳神経倫理教育科目のシラバス案(東京通信大学シラバス様式に準拠)を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初2023年度中に実施、とりまとめを予定していた、「責任ある研究とイノベーション」の観点による文献情報の精査、知見の整頓、類型化について、特に新規の和文文献の収集が進まず、オープンアクセス論文に加え、有償の電子文献を調査対象として追加しても、テキスト分析に足る十分な情報量が得られないという結論を出すまでに時間を要した。また、代替の調査研究対象の設定について、電子文献情報を有償で得る場合、本研究の資金規模では困難であることを確認し、オープンデータとして質と量が十分であるものを探索、入手するまでにも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間延長申請が認められたため、残りの期間において、国内外で発行されている英文原著論文のテキスト分析に用いられたオープンデータ(取得済)によるテキスト分析を実施し、本研究を通して作成したシラバス案が、世界的な脳神経倫理の学術研究動向を反映したものであるか、検証を行う。また、本研究実施前に作成し、既に収録、配信しているオンライン教育用の「脳神経倫理」科目のシラバスについても同様の検証を行い、内容の過不足や改善点について検討する。 上記成果は、今年度採択された科学研究費基盤C「医学とトランスサイエンスの連携による脳神経倫理教育手法の開発」において、本学におけるオンライン教育科目の改善だけでなく、対面講義、演習を行う大学、大学院の科目としてのシラバス作成と実施検証研究に引き継いでいく予定である。 また、公開シラバス調査とアンケート調査の結果に加え、電子媒体で公開、入手可能な和文文献情報の少なさや、電子媒体以外の和文文献の発行状況から、日本において脳神経倫理の学問体系が未確立である現状が確認できたため、将来的な学問体系の整頓、国内の高等教育機関で普遍的に使用可能な「教科書」的な論文集等の作成、発行が重要であるという認識を国内のステークホルダーに周知啓発する活動を進めたいと考えている。
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