研究課題/領域番号 |
22K20301
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0110:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
山本 佳祐 京都文教大学, 総合社会学部, 講師 (80964973)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 利他行動 / 共感 / 評判 / 独裁者ゲーム / 損失 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、匿名下で利他行動 (自らがコストを支払って他者に利益を与える行動) が生起する理由として評判に基づく説明の限界点を明確にし、共感が利他行動の生起を促していることを明らかにすることである。これまでの研究では独裁者ゲーム (実験参加者が他者にお金を分ける実験) を用いて利他行動の生起メカニズムが検討されてきた。しかし、独裁者ゲームでは通常、お金を受け取る側である受益者は特に困窮していない。それゆえ、人々の共感が誘発されにくい場面設定となっている。そこで本研究は、他者の困窮状態を変化させるという操作を独裁者ゲームに組み込み、共感が利他行動の生起に果たす役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、他者の困窮状態を変化させるという共感的配慮のより強力な操作方法を新たに考案し、この操作を独裁者ゲームに組み込むことで共感的配慮が利他行動の生起に果たす役割を明らかにすることが目的であった。本年度においては計画案のうち一つ目の研究を実施した。実験の結果、独裁者ゲームにおいて他者の困窮状態を変化させる損失の操作を加えると、損失のない統制条件に比べて、損失のある実験条件では、分配額が多くなるという損失の主効果が有意に示された。また、この実験では分配者の匿名性も操作されていた。興味深いことに、自分の意思決定が相手に知られるかもしれないという懸念が働く非匿名条件の中で損失条件に割り当てられた参加者は、500円の分配の元手の中から、平均300円程度の金額を相手に分配していることが示された。従来の独裁者ゲームにおいて平均分配額が元手の半分以上の金額になることはあまりなく、本実験においても上記以外の条件では平均分配額は200円程度にとどまっていた。以上のことから、評判を良好に保つためという目的だけに動機づけられているよりも、他者の困窮状態に共感しそれを改善するように動機づけられた方が、利他行動が多くみられることが示唆された。この知見は、従来の独裁者ゲームでは共感が利他行動にもたらす影響を考慮しきれていなかった可能性を指摘するものであり、損失の操作を独裁者ゲームに組み込むことの重要性を示している。 ただし、上記のような共感の重要性が示唆される一方で、それが真に共感の効果であるかについて議論の余地が残されている。なぜなら、匿名条件においては先と異なり、統制条件と損失条件との間に分配額の差がみられなかったためである。共感に動機づけられているならば、匿名性に関係なく、統制条件よりも損失条件で分配額が多くなるはずであった。次の研究において、共感の効果をより明確に示すことが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体で2つの研究計画を立てていた中で、1つ目の研究の実施を完了し、一定の知見が得られたことから、おおむね順調に進展していると判断される。ただし、論文投稿については、本研究課題以外のデータを論文としてまとめることに注力していたため、2022年度において本課題のデータをまだ論文として投稿できていない。今年度においては論文投稿を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画では、2つ目の研究として意思決定時間を操作する想定であった。しかし、共感が利他行動に果たす役割を明らかにするという当初の目的を達成するには、異なる要因に着目する方が望ましいと思われたため、計画案に若干の修正を加えることにした。具体的にどのような要因を扱うのかであったり、どのような方法で要因を操作するのかについてはすでに具体的な構想が定まっている。現在は、その操作を効果的に行うための実験手続きの詳細を詰めている段階である。それが決まれば、調査会社に委託してオンラインでの実験を実施する予定である。今年度の前期中には実施ができる見込みである。
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